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総務委員会(監査事務局の会計監査指摘額について)

平成23(2011)年11月28日

総務委員会

〇吉田(康)委員 よろしくお願いいたします。
 最近、オリンパスとか大王製紙とか、一部上場企業で相次いで不祥事が発覚をしておりまして、企業監査のあり方というのが非常に問題になっております。こういう時期ということもありますので、改めて本日は、公共部門の監査機関のあり方ということで、幾つかお伺いをしてまいりたいと思います。
 地方分権が推進をされて、地方自治体の自主性、自立性が拡大している中で、自治体行政の活動が法令等にのっとって適正に、かつより効率的、効果的に行われるよう、自治体みずからが検証することの必要性は高まっておりまして、監査の果たす役割は一層増していると思います。
 そしてまた、都民に対する説明責任を果たす、この点についても、都民の要請は一層強まっておりまして、知事から独立した機関である都の監査委員が行った監査の結果をわかりやすく公表していくことは大変必要不可欠で、この重要性も高まっている。都の監査に対する都民の期待は極めて大きいものと改めてご指摘をいたします。
 そこでまず、平成二十三年度、そして一年前の二十二年度の監査事務局の予算額及び組織、人員についてお伺いをいたします。

〇長谷川監査担当部長 平成二十三年度当初予算額は九億三千五百万円、二十二年度の予算現額は九億三千五百三十二万円でございます。
 組織、人員につきましては、両年度とも、事務局長以下五課体制、職員定数は八十九名でございます。

〇吉田(康)委員 ありがとうございます。
 続いて、都の監査委員監査の平成二十二年の年間の指摘件数、そして指摘金額についてお伺いいたします。

〇長谷川監査担当部長 平成二十二年の監査の指摘件数は百五十一件、指摘の金額は二億二千万円でございます。

〇吉田(康)委員 わかりました。
 監査による指摘金額というのは、都民の方から見ますと、端的にいって行政のやってしまった失敗というか、むだというか、あるいは不経済、非効率、こういうものの金額ということになろうかと思います。
 今お聞きをしていきますと、九億三千五百万円内外の予算に対して、指摘の金額は二億二千万円ということですから、直近の平成二十二年について、この指摘金額の予算額に対する割合というものを計算してみますと、約二割ということになるわけでございます。
 この割合を、平成二十二年だけでなくて、過去の年次の都の監査における指摘金額と予算額に対する割合ということで計算をしてまいりますと、二十一年は約五割、二十年は約六割といったような数字になってまいります。これを過去十年さかのぼってみますと、一〇〇%という割合を超えるのは三カ年にすぎません。
 ここで、国の収入支出の決算等の検査を行うために、憲法の規定に基づいて設置されている会計検査院について見てみたいと思います。
 先日、新聞各紙を含め各種メディアで大きく報道されたことでありますが、会計検査院が首相に提出をした平成二十二年度決算検査報告書では、税金のむだ遣いや不正経理など不適切な経理処理の指摘は五百六十八件で、計約四千二百八十三億円ということでありました。
 会計検査院の予算について、ホームページなどで見てみますと、平成二十三年度の予算額で約百七十一億円となっております。指摘金額は、この検査院の予算額の約二十五倍ということでございます。
 これは大きく倍率が違うなと思うわけですが、ここで、少し細かくなりますけれども、都の監査委員監査の指摘金額の予算額に対する割合と国の会計検査院の指摘金額の予算額に対する割合、これを過去十年さかのぼってちょっとご指摘してみたいと思います。
 都の監査事務局の指摘件数、これですね、予算額の倍率で見ますと、平成十二年ぐらいから見てまいりますと、三%、四%、四%、六九%、一一六%、一四九%、三〇%、一〇四%、六六%、五三%、そして先ほどお話がございました二十二年で二三・五%、二四%という、要するに一〇〇%を切る指摘の割合ということであります。
 これに対して、会計検査院の予算に対する指摘金額、これをパーセンテージで見ますと、同じ平成十二年ぐらいから見てまいりますと、一三〇%、一二二%、一四一%、二〇三%、二一二%、四五九%、二二三%、一四四%、七一六%、一三五九%、一〇〇四八%、つまり百倍ですね。そして、平成二十三年度で二五一三%というふうになります。
 ちなみに、会計検査院の年報によりますと、平成二十三年度の事務総局の定員は千二百七十三人でございますので、事務局職員一人当たりの指摘金額で比べますと、都の監査は一人当たり約二百五十万円、会計検査院は三億三千六百万円となります。
 このように見てまいりますと、都の監査委員監査によって指摘された金額は、国の会計検査院に比べて少ないわけでありますが、この点について所見を伺います。

〇長谷川監査担当部長 都と会計検査院では、指摘金額の算出についての考え方が違い、予算額に対する指摘金額の割合等を単純に比較することはできません。
 また、法令や規則を守るという意味での合規性ですが、そうした合規性の指摘など、数値としてあらわせないものもあり、監査の有効性は、指摘金額の大きさのみではかれるものではないと考えております。
 例えば、平成二十一年の定例監査で指摘した事項として、物品を納入させた後に契約関係書類を作成して代金を支払っているなど、適正な契約手続を行っていない事例がございました。これは、都の会計手続、契約手続から見ると極めて重大なルール違反でございまして、都に明示的な金銭上の損失を与えているわけではありませんが、数値にはあらわせないものでございます。

〇吉田(康)委員 金銭上の損失を与えたわけではないけれども、重大な規則違反というか、ルール違反ということの指摘も含めて、監査の有効性は指摘金額の大きさのみではかれるものではないということはもう重々わかります。
 しかし、これは都の監査がそうだということではなくて、一般論として申し上げることでありますが、監査の有効性は指摘金額の大きさのみではかれるものではないという、これはまさしく正論ですが、これが、都民、住民が期待する積極的な、あるいは攻撃的なといってもいいかもしれません、チェック機能を積極的に果たすと、こういう監査に踏み込もうとしない監査当局のエクスキューズというか、いいわけに使われる可能性があってはいかぬというか、可能性があることに一抹の危惧を感じると、これは大事な問題意識ではないかと思うんです。
 そこで、少なくとも監査の効果を金額で表示するというのは、明快さ、都民にとってのわかりやすさという点で極めて重要であること、これは間違いないことであります。
 そこで、この観点から伺うんですが、都と国の会計検査院で指摘金額の算出について考え方が違うということでございますが、金額についての指摘という切り口などから、もう少し具体的にご説明していただきたいと思います。

〇長谷川監査担当部長 会計検査院の報告書によりますと、会計検査院は、指摘金額を、租税などの徴収不足額、工事などに係る過大な支出額、補助金等の過大交付額などに加え、都では指摘金額に含めていないところの管理が適切に行われていない債権等の額、有効に活用されていない資産等の額も含めて定義しております。
 また、都は、過大支出などについても、事実関係が確認され、不経済な支出として客観的に論証可能なものを指摘金額としてきました。
 会計検査院と都の監査を類似の事例で具体的に比較すると、会計検査院は、平成二十年度決算報告の中で、貸与された奨学金の返還について、その後、住所不明となった者の延滞債務の合計を指摘金額として挙げてございます。
 一方、都では、平成十六年の定例監査において、東京都育英資金について、滞納額の減少と滞納の発生抑止のための事務の見直しを求めており、滞納額は約七億円になりますが、指摘金額とはしておりません。

〇吉田(康)委員 国と都の指摘金額の算出の仕方が違う、対象も違うということはわかりました。
 一般論としてというか、都の姿勢について受けた印象ですが、改善すべき事項の指摘ということを超えて、金額について算出、指摘する場合は、非常に手がたいものに限るという、とにかく間違いないようにという方針だと受けとめました。これまでのそういう姿勢というのを否定するものではございません。しかし、最近の都民の透明性、公開性への要求とか、いろいろなものを考えますと、やっぱり時代、状況、こういうものは変わってきているのではないかなと思うわけであります。
 都民は、今は、行政がとにかくすべて正しいから任せておけば大丈夫という、残念ながらそういう状況ではなくて、行政の効率性や経済性というものについて、都民みずからも知りたい、判断したい、そのための材料を幅広くきちんと示してほしい。行政活動で重要であることの一つは、こうした都民のニーズにこたえる適切な情報提供だということも重要な点だと思うわけであります。
 先ほど会計検査院による指摘金額が予算額の約二十五倍とか、ずらっと申し上げました。百倍を超えた年もありました。これは昔は、申し上げたとおり、一倍程度、一〇〇%程度という状況だったわけです。これが最近大きく変わってきたわけです。
 このご質問を考えるに当たって、外国の主要国の会計検査機関のコストパフォーマンスについて調べてみました。アニュアルレポートとか、インターネットとか、最近便利な時代でございまして、やらせていただきましたけれども、アメリカの連邦会計検査院、GAOと我々はよく呼んでおります「United States Government AccountabilityOffice」というところですが、ここのホームページによりますと、二〇一〇年のGAOによる指摘金額は、GAOに投入された経費の約八十七倍ということでございます。
 これを二〇〇六年、平成十八年から見てまいりますと、彼らは、予算一ドル当たりのコストパフォーマンスといういい方をしますけれども、予算一ドル当たり百五ドルの指摘と九十四ドル、百十四ドル、八十、八十七、八十一と、指摘金額は、コスト、予算の大体百倍ぐらいが平均的に指摘金額としているというわけございます。
 そして、同じくイギリスの会計検査院、これはNAO、「National Audit Office」といいますが、ここのアニュアルレポートによりますと、同じく二〇一〇年の指摘金額は、NAOの活動に費やされた費用の約十三倍、大体十倍ぐらいかなという指摘金額の倍率になります。
 今でこそ、政府や政府関係機関のむだを監視、摘発する専門的機関として、その活動がマスメディアの注目を引いて、国民の期待を一身に担うかのようになっている会計検査院でありますけれども、一昔前までは、一般の国民に必ずしも関心あるいはなじみのある存在ではありませんでした。
 二十年前、平成三年の会計検査院による指摘金額は、予算額の〇・八倍、一倍に満たない八〇%というものにとどまっておりました。その後、おおむね十年ほど前からこの比率が非常に伸び始めて、会計検査院の積極的な検査活動が、指摘金額の大きさという非常にわかりやすい形で国民の耳目を引くようになりました。
 どの政権がどうということはありませんけれども、民主党政権になってからというか、非常に指摘金額が、それまでの一けた倍、一倍、二倍と、頑張っても四倍というところが、十三倍、百倍、二十五倍と、こういうアグレッシブな指摘の仕方になってきているわけでございます。
 これは、私も前職は経団連というところにおりまして、この問題は若干取り組んでいたんですけれども、やっぱり外国に比べて日本の行政は、間違いを対外的に大々的に宣伝しようというよりは、きっちりと詰めて、間違いないものを指摘して、それを確実に是正するという姿勢だったんです。
 アメリカのGAOというのは議会に附属する機関、行政ではなくて議会に附属する機関です。ですから、議会の要請によって、行政のこれを調べろ、あれを調べろ、あれは問題じゃないかというのを受けて、どんどんどんどん指摘していくと。予定調和的ではなくて、その指摘には踏み込み過ぎというものも含めて積極的にやる、それを専門家も国民もジャッジする、こういう非常にチェック機能の激しい社会に応じた制度でございます。
 会計検査院を別に褒めるというつもりでいっているわけではないんですが、会計検査院は、時代の状況の変化を受けとめて、みずからの使命、ミッションについての自覚を高めるとともに、国民に対する説明責任を果たすためにそれなりの努力をしてきた、これが数字にあらわれてきたのではないかと思います。
 翻って、都の監査の現在のあり方について考えてみますと、もちろん、会計検査院が憲法によって内閣から独立性を保障されて、違法、不当な事項について改善のための措置要求ができることはもとより、法令や制度等についても、必要に応じて改善の措置要求ができる、こういう権限を持っていることに対して、都の方は、地方自治法上、知事と執行機関からの独立性は規定されているとはいえ、予算等においては知事の管轄下にある、こういう都の監査委員を同じ土俵で論じるのは不適切でありましょう。
 しかしながら、我が国の会計検査院のみならず、私の存じ上げている限りの諸外国の監査機関の例と比べても、先ほどご答弁いただいたように、監査当局と監査の対象となる組織の間で、実務上の密接な調整なくしては、むだや不経済の金額を算出、公表しないようにも聞こえる、手がたいというか、消極的なというか、スタンスでは、現在、都民から求められている都の監査に対する都民の期待にこたえることができないのではないかなと思います。
 国と都と、奨学金についてその公表の仕方が違うというお話がございましたけれども、都民への一層の説明責任を果たすために、指摘金額の算出や公表、こういうものについて、それ以外についても、国の会計検査院のように、より積極的な監査を進め、これを広報というか、公開というか、すべきだと考えます。こういうことについて局の見解をお伺いします。

〇塚本監査事務局長 監査結果の報告に当たりましては、確実に損失として計算できる金額を指摘金額としております。
 ただ、指摘金額には含めないものの、先ほど部長からご答弁申し上げた事例のように、不適切な対応については、指摘事項として確実に指摘をしておりまして、改善を求めております。決して、監査に当たって、あるいは公表に当たって、消極的なスタンスというものではございません。
 いずれにしましても、都民の皆様にわかりやすい監査やその結果の公表をしていくというのは、いつの時代にあっても重要なことでございまして、今後も、さまざまな工夫をしながら、効果的かつ効率的な監査を行うとともに、わかりやすい監査結果の公表というものにも努めていきたいと思っております。

〇吉田(康)委員 もちろん、これまでが間違っていたとかというつもりではないんです。都民にわかりやすい、数字なんか一番わかりやすいわけです。より積極的に情報公開をしていただきたいと、そういうご答弁だったと理解しておりますが、改めてお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。

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