平成23(2011)年10月24日
公営企業会計決算特別委員会
〇吉田委員 皆様お疲れさまでございます。本日最後の質問者でございます。よろしくお願いいたします。
いうまでもなく、人間にとって、水の大切さ、貴重さということは本当に改めて述べるまでもないことでございます。日本は古来、水に恵まれてきたとはいえ、そのポテンシャルを人々の実際の生活に結びつけてきたのは、先達の営々たる努力のたまものであり、その遺産を受け継いで、たくさんの人の住むこの東京都においても、世界でも最も良質な水をしっかりと安定的に供給してくれています水道局の皆様のご努力に改めて心より感謝を申し上げる次第でございます。
こういう前提のもとで、まず、水道事業会計の平成二十二年度決算における財政状況についてお伺いいたします。
〇福田総務部長 平成二十二年度は、東京水道経営プラン二〇一〇の初年度として計画に掲げた事業を着実に実施してまいりました。
その結果、平成二十二年度決算の収益的収支は、収入が三千三百四十四億円に対して支出が二千七百九十六億円であり、差し引き五百四十八億円の純利益となっております。
また、資本的収支は、収入が二百八十四億円、支出が一千三百七十四億円であり、差し引き一千九十億円の資金不足となっております。
〇吉田委員 ありがとうございます。このようにお聞きしますと、順調に事業を行っていらっしゃるのかなと、このように受けとめるわけですけれども、この純利益の使途はどのようになっているのかお伺いいたします。
〇福田総務部長 水道事業は、都民生活と首都東京の都市活動を支えるライフラインとして、将来にわたり安全でおいしい水を安定的に供給するため、長期的な視点に立った施設整備が不可欠であります。
このため、純利益五百四十八億円のうち四百九十八億円については、建設改良費や企業債償還金、すなわち、現在及び過去の施設整備の財源に充当しております。
また、残りの五十億円については、平成十九年度に創設した大規模浄水場更新積立金に充当し、将来の施設整備に向けた積み立てを行っているところであります。
〇吉田委員 ご答弁をお聞きしますと、この純利益、五百五十億円弱出ておりますが、このうち五百億円弱は建設改良費や企業債の償還金など、水道サービスの提供のために必要な資金に充当してしまっていると。さらに、残りの五十億円についても、浄水場の更新の積立金として積み立てているんだと。要するに、乱暴ないい方をすれば、浮いたお金はないよというか、全部大切な事業のために使い切ってしまっていると、このように理解をしたわけでございます。
水道施設というのは莫大な、膨大な施設が必要なわけでございまして、なるほど、そういうことなのかと思いますが、また、水道局は、今回の震災もございましたが、震災対策を初め、さまざまな取り組みもあわせて進めているということを聞いております。
今回、公決でございますので、水道局が平成二十二年度に行ってきた主な施設整備の事業内容について、改めてお伺いします。
〇福田総務部長 当局では、経営プランにおいて三つの主要施設整備事業を推進しているところでありまして、まず、水源及び浄水施設整備事業については、新規水源の確保、より安全でおいしい水を供給するための高度浄水施設の建設などを行っております。
次に、送配水施設整備事業については、安定的かつ効率的な配水の確保、バックアップ機能及び耐震性の強化を図るため、送配水管の新設や水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業などを進めております。
最後に、給水設備整備事業については、安定的な給水の確保を目的とした大口径給水管の耐震強化などを行っているところであります。
〇吉田委員 いろいろ、本当に大変さまざまな事業を行っていらっしゃるということでございますが、この中で、先ほども質疑がございましたけれども、やはり今、震災の直後ということもありまして、現在水道局が推進している水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業に要する費用、五千億円というお話を聞いております。この金額をちょっと確認させていただいて、そして、その事業の効果についてまた改めてお教えください。
〇福田総務部長 震災時における断水率の低減と復旧日数の短縮を図るため、平成二十二年度より、耐震継ぎ手管への取りかえを大幅に前倒しして実施しております。
総事業費は、平成三十一年度までの十年間で約五千億円を見込んでいるところであります。この事業は、平成二十二年度末の水道管路の耐震継ぎ手率二七%を平成三十一年度に四八%へ向上させるもので、大規模地震発生の際、想定される断水という事態に対し、平常給水までの復旧日数をこれまでの最大三十日、要するに、最も日数がかかる場合、三十日かかるところがあるということでございますが、これを二十日以内に短縮する効果をもたらす事業であります。
〇吉田委員 ありがとうございます。さきの方の質疑でもございましたが、なるべく早くやってくれと。それはこれを受ける側の気持ちでありますが、局としても最大限、全力で早く達成しようとご努力されているということはよくわかります。
そしてまた、先ほど申し上げたように、今後、この水道の施設、膨大な施設産業でございますので、これは山田副委員長もご質問されましたが、今後、水道施設の老朽化が進みますと、一斉に浄水場の更新の時期を迎えるというように伺っております。
その費用も一兆円にもなると、非常に大きな金額をお聞きしているわけですが、この対象となる浄水場がどのぐらいあって、また、一兆円というのはどのような計算に基づいてこの金額を算出しているのかお聞かせください。
〇福田総務部長 現在、水道局は十一カ所の浄水場を有しておりまして、これらの浄水場の多くは、昭和三十年代から四十年代の高度経済成長期に集中的に整備してきたことから、平成三十年代以降、一斉に更新時期を迎えることになります。
事業費の約一兆円は、最も建設年次の新しい平成五年度に完成した三郷浄水場の建設費、約一千五百億円を施設能力の日量百十万立方メートルで除した単価をもとに算出しているものでございます。
〇吉田委員 ありがとうございます。それだけの更新が必要だと。また、いろいろと均てんしてやっていかないと、一挙にこれを変えていくというのは不可能だと思います。
今後、浄水場の更新をどのように進めていくのかお教えください。
〇黒沼企画担当部長 水道局では、これまで老朽化した施設の大規模改修や配水池及びろ過池の耐震化など、浄水場の改良に取り組んでまいりました。適切な維持更新や改良工事を行っていましても、浄水場の経年劣化を完全に防ぐことは困難でございまして、将来にわたって安定給水を確保していくためには浄水場の更新が不可欠でございます。
一方、更新は施設停止を伴うため、施設能力の低下を余儀なくされるのみならず、送配水管ネットワークや給水所等の大規模の運用変更及び増強などが必要になってまいります。
こうしたことを踏まえまして、安定給水に支障が生じることを防ぐため、今お話もございました、いわゆる更新の平準化、アセットマネジメント等を活用して延命対策を行うことなどによりまして、大規模浄水場の更新に先立ち、代替となる浄水場及び関連施設の整備を進めてまいります。
〇吉田委員 本当にさまざまな現状に即して、工夫を凝らしてやっていかれるんだということがよくわかりました。とにかく、五百億円、順調にやっているように見えて、それだけではなくて、大変な膨大な資金を少しずつ捻出していく過程の中でやっていらっしゃるんだということがよくわかりました。
こうした中で、冒頭おっしゃっていただいた収益的収支、収入、三千三百四十四億円、この中の主たる収入源であります給水収益についてお伺いします。
過去十年間の給水収益の状況を見ますと、予算と決算では常に決算額が予算額を下回っております。この事業の主たる収入源について、事前にこれだけ収入があるはずだと、このように見積もっていながら、十年間連続で、実際にふたをあけてみたら、実際の収入はそれに足りないと。
これはちょっと問題ではないかと思うわけですけれども、予算時の見積もりの方法、あるいは見積もりが甘いのではないか、十年連続下回るというのはどういうことかと、こういうふうにも思うわけですが、これについてちょっとお教えください。
〇福田総務部長 予算における給水収益は、給水件数や調定水量の過去の実績に基づくとともに、政府の経済見通し等を参考にして見積もっております。
給水収益は、その年の天候や景気動向等のさまざまな外的要因に左右されるものでありまして、例えば、平成二十年のリーマンショックは経済的に大きな影響があったわけですが、そのような中においても、給水収益における過去十年の予算額と決算額の乖離は平均で二・二%にとどまっております。
今後とも適切に見積もりを行うよう努めてまいります。
〇吉田委員 乖離幅が二%ぐらいということで、大外れではないと私も思います。
ただ、下方に、必ず収入が現実には下回っている。つまり、毎年毎年みんな水を使わなくなっているんだと、こういう状況を考えますと、今後の見積もりということについて、今まで以上にシビアに考えていただかないといけないのかなと。これについてはもう少しまた調べさせていただきたいと思います。
また、収益を上げる一つの算段として、これまでいろいろな先生方が質疑されておられますが、主に広報、都民の皆さんに水道水の質がよいということを体感していただくためと、こういう目的で東京水をペットボトルで配布されたり、場合によっては販売もされているという状況でございます。
過去の例で、コストをざっくりと割り返すと八十五円ぐらいで、それを百円で卸して卸売をしているんだというような資料も見させていただきましたが、今後、もちろん広報目的という局のお考えはわかりますが、もうちょっと商売っ気を出して、販売の方にももうちょっと力を入れてはどうかというふうにも思うんですが、これはちょっと希望だけで、ご答弁は結構でございます。
次に、災害対策の方にご質問を移らせていただきます。
東京都では、従来、津波による最高潮位、潮の高さですね。最高潮位よりも、台風などによる高潮時の想定水位の方が高いと、こういうふうに考えておりまして、防潮堤により浸水を防ぐことができると、このようにしてまいりました。
しかし、東日本大震災で示されたように、想定外の事態が生じてしまったという場合には、特に低地部、特にゼロメートル地帯、こういう場所では浸水被害の可能性も懸念されるわけでございます。
そこでお伺いしたいんですが、ゼロメートル地帯を含む低地部には局所管の水道施設はどれだけあるのか。そして、そのうち隅田川以東の河川における計画高潮位、AP、荒川ペイルですね。APプラス五・一、AP五・一メートルよりも地盤の低い施設はどれだけあるのか。そしてまた、現在の被害想定では、水道施設にどのような被害が生じるというふうに想定しているのかお聞かせください。
〇酒井浄水部長 水道施設では、金町、三郷、三園の三つの浄水場と十三カ所の給水所及び増圧ポンプ所がゼロメートル地帯を含む低地部にございます。そのうち、APプラス五・一メートルよりも地盤高が低い施設は、金町、三郷の二つの浄水場と、八カ所の給水所及び増圧ポンプ所があります。
また、国の中央防災会議の大規模水害に関する専門調査会が公表いたしました利根川及び荒川の洪水はんらんによる当局施設への被害は、一部の浄水場、給水所において若干の浸水被害が発生すると想定されております。
〇吉田委員 ありがとうございます。結構多くの施設がやはりあるわけでございますが、施設には若干の浸水が発生するというご答弁、その場合、施設にはどのような影響が生じるのかお聞かせください。
〇酒井浄水部長 水害による当局施設への影響でございますが、浄水場によっては機能が一部停止する可能性がありますが、応急的な防水措置を講ずることにより被害を防ぐことが可能と考えております。また、万が一これらの浄水場が機能停止した場合においても、他の浄水場からのバックアップにより対応が可能と考えております。
なお、給水所におきましては、浸水した場合でも、浄水場からの直送運転に切りかえることで給水が可能となっております。
〇吉田委員 ありがとうございます。少なからず浸水被害を受ける可能性があるというこれらの低地部の施設に対して、現在、具体的な対策は検討していらっしゃるんでしょうか、お聞かせください。
〇酒井浄水部長 高度浄水施設など、浄水場内に新設している施設ですとか、新たに建設している給水所におきましては、想定される浸水高さよりも出入り口を高くするなどの対策を既に講じております。
また、既存の施設につきましては、浸水を防止する方法につきまして現在検討中でございます。
〇吉田委員 いろいろとお聞かせいただきまして、ありがとうございます。東日本大震災の重要な教訓は、深刻な被害をもたらす可能性のある事態を、確率が低いという理由で想定外だとして、対策を検討しないということはあってはならないんだということだと思います。
本日は細かくは申し上げませんけれども、我々が第三回定例会の代表質問でも質問を申し上げましたが、災害に関して最悪の事態だとして懸念をしておりますのは、これから政府が検討を初め、来年の四月に中央防災会議で結果というか、考えを示しますが、三連動、東海、東南海、南海だけではなくて、五連動の地震というのを想定するそうですが、そのような大規模地震の際に、実際に東北で起きたように、ゼロメートル地帯において地盤が沈下してしまうというようなことが万一起きて、そして本当に運悪く、満潮のタイミングで、地震による津波と台風による高潮が重なってしまって、従来の想定を超える、規模を超える津波、高潮が東京に達して、地盤とともに下がってしまった堤防を乗り越え、あるいは、堤防の破損してしまった部分や、実際今回もございましたが、閉じられなかった水門の間を、あるいは地中のどこかからを通って、地中内の構造物を通って、堤防の内側に流れ込んだ水が噴き出して、ゼロメートル地帯で洪水、冠水が起きると。こういう事態が大変、最も最悪な事態だというふうに考えております。
従来のように、まちに絶対水が入らないようにと取り組んでいくことはもちろん当然で、やっていただかなければいけないわけですが、想定外の事態が起きてしまったと、こういうときには、万々が一、津波、高潮などが侵入してしまった場合にお手上げだというのではなくて、それに備えて、低地部の施設について、抜本的な対策、これまでの想定に基づく対応をご答弁いただきました。しかし、代表質問へのご答弁でも総務局からお答えいただきましたけれども、抜本的な対策、これから想定を見直して講じていく必要があると考えております。
そしてさらに、最初の方の質問でお聞かせいただきましたが、浄水場等の施設の更新、一兆円にも及ぶというこの更新の計画を立てるに当たっても、この災害の想定、こういうものを織り込んでいったものとしなければいけないと、このように考えております。
また、先ほど、来年の一月を目途に災害に対する指針を策定されるんだと、こういうご答弁をお聞かせをいただいたんですけれども、中央防災会議のお示しする想定はさらにその後出てくる。ですから、この指針で打ちどめではなくて、さらなる取り組みをもちろん求めていかなければいけないと思うんですけれども、これらのことについてご見解を伺います。
〇酒井浄水部長 想定外の災害に対する抜本的な対策でございますが、水道局ではこれまでも既存の被害想定に基づき、対策を検討してまいりましたが、これらの想定では、台風襲来時に大規模地震が発生するという複合的な災害は考慮されていませんでした。
現在、東日本大震災を教訓として、国では中央防災会議の地震・津波対策に関する専門調査会、また、都においても防災会議で、被害想定の見直しを始めているところでございます。今後これらの状況を見ながら、その結果に基づいて必要な対策を検討してまいります。
〇吉田委員 大変この震災の教訓をしっかりと受けとめた前向きなご答弁をいただきました。今後も、都民のライフライン、命の次に大事なというか、命はこれとともにあるという水をしっかりと守って供給していただくために、また今後ともしっかりとご努力をいただき、私どももしっかりとそれを応援させていただくことを改めてお誓いして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。