平成21(2009)年10月29日
厚生委員会
〇吉田委員
次に、医療の分野についてお伺いをいたします。
医療の分野で大変心配をしておりますのが、都立小児三病院の統廃合に関連した多摩地域の小児医療、ここの姿でございます。そもそも多摩地域は、医療資源が二十三区に比べて少ないという中で、さらにこの小児の分野ですが、小児医療施設、減少しておりまして、区部に比べて大きな格差が生じているわけであります。
これは、ことしの第一回定例会において局長もご答弁されていますが、東京都の医療施設調査によりますと、多摩地域において小児科を標榜する病院は、平成六年の七十九施設から平成十八年には五十七施設、また診療所についても平成六年の八百七十七施設から平成十八年には七百七十七施設に減少していると、トータルで百施設以上も減少しているということであります。
この施設数の減少に伴って医師数も減少していると考えますが、小児科の医師数の区部と多摩地域の比較についてお伺いをします。
〇吉井医療政策部長
平成十八年の医師・歯科医師・薬剤師調査東京都集計結果報告、これによりますと、小児科医師数は区部で二千八百十九人、多摩地域で九百五十七人となっております。これは平成十二年の同調査報告に比べまして、区部では二百三人、多摩地域で六十二人の減となってございます。
〇吉田委員
多摩は区部のざっくり三分の一と。それぞれ、区部では二百三人、六・七%ですかね。多摩では六十二人、六・一%減少ということだと思います。
多摩では、質的にも医療資源が不足をしている。これまで高度専門的な医療を提供する施設がなかったということでありますので、今度、府中に小児総合医療センターを整備するということは大変歓迎をいたします。
しかし、小児病院が移転してなくなってしまう清瀬、そして八王子地域の医療、いなくなった後、廃止された後、本当に大丈夫なのかということについて、地元の住民からも、私も、地元じゃないですけれども、不安の声が寄せられておりますし、大変心配に思っております。医療資源の少ない多摩地域において、多摩地域内でも府中に集約化が図られるとなると、やっぱり移転後の地域、ここの格差はさらに進むことになるのではないかと思います。
この小児病院が移転をする南多摩医療圏、それから北多摩北部医療圏の現在と移転後の小児医療資源はどのように推移をするのか、例えば小児科の医師数の比較について伺います。
〇吉井医療政策部長
まず、限られた医療資源を効率的に有効に活用し、小児医療提供体制を確保するためということで、小児医療の拠点となります小児総合医療センターが中核となりまして、多摩の初期、それから二次、三次の医療機関が、それぞれの役割分担のもと機能の連携を行い、重層的に医療の給付連携を発揮する、こうしたことが重要であるというふうに考えております。こうした取り組みによりまして、多摩地域の小児医療水準の向上が図られるものと考えてございます。
今ご質問の八王子、それから清瀬の現在の人員体制、これが移管をするというふうに、数的なものでお示しいたしますと、八王子小児病院がございます南多摩保健医療圏は二百七十八人から二百五十四人、清瀬小児病院がある北多摩北部保健医療圏におきましては百九十四人から百四十八人となります。
〇吉田委員
一次、二次、三次、連携いろいろとありますけれども、医師数で見ると、八王子は二百七十八から二百五十四と、清瀬は百九十四から百四十八と。これ、柳ヶ瀬委員もちょっと質疑をさせていただいたときに指摘をしていましたけれども、これはやっぱり一次、二次が足りないと三次は大変なことになっていくわけであります。地域の人は、やはり自分の地域に医療が確保できないということは、大変不便というか、困るわけですね。
東京都の保健医療計画、二十年三月改定版を私も改めて勉強させていただいて、すべての都民が住みなれた地域で安心して生活していくために、都民が必要とする保健医療サービスを、だれもがいつでもどこでも、どこでもですね、必要に応じて適切に受けることができるようにすることが不可欠であると。
そして、二次医療圏については、これは一般の医療ニーズに対応するために設定する区域であって、入院医療を圏域内で基本的に確保すると。その整備を図るための地域単位だといっていて、これは医療法の規定によって、主として病院の病床及び診療所の病床の整備を図るべき地域的単位として設定する医療計画上の区域でもあると。で、十三の圏域を設定しているというわけで、ここで基本的な医療ニーズを確保しなきゃいけないというふうに都の医療計画は書いてあるんですね。
これ、数字つくっていただきました。さらに、それを一応、自分で勉強してみました。ちょっと大事な数字なんで、いわせていただきます。
小児医療資源の状況なんですけれども、これ、数字がなかなかないんで、平成十八年の数字ですが、平成十八年の各医療圏の人口と年少人口、子どもの人口ですね。それから、小児科の医師数、それから割り返した年少人口に対する医師数−−千人対、千人当たりですね−−というものをつくっていただきました。ないものは自分で割りました。
そしたら、まず一番病院の多い、区の中央部で五・九、区南部で二・八、区西南部で三・五、区西部四・九、区西北部で二・八、区東北部は二・三、区東部で一・七、区部平均は三・一。これに対して、西多摩が一・〇、南多摩は一・六。これ、細かくいうと一・五五ですね、十八年。北多摩西部が一・八、北多摩南部で二・四、北多摩北部で二・一、正確には二・〇六、多摩平均が一・八と。これが、この二つの病院移転してしまうと、南多摩は、二百五十四という数字いただいた、これを割ると、人口はこの地域、少しずつふえているんですが、ふえないと、前年並みと見ても、一・三九まで減ると。
そして、清瀬というか、北多摩北部については、人口が微増しているところですが、これも百四十八人になると、千人対で一・五八まで落ちちゃうと。多摩平均の一・八を大きく、一・三九とか一・五八とか割り込む数字なわけです。これで私は、大丈夫ですよとはいえないんじゃないかなと思うわけですが、この都立の小児三病院を廃止するというんじゃなくて、集めた後、ちょっとしばらく、三〇%稼働とか二〇%稼働でもいいんですけど、つぶし切らずに、将来、何とか芽を残して、このどんどん減っていくものを、また医療の拠点としてやっていくための種として少しでも残すべきじゃないかと思うんですけれども、今申し上げた、二次医療圏で大幅に格差が生じてしまうということについて、ご見解を伺います。
〇吉井医療政策部長
ただいま二次医療圏ということでの医師の配置数ということでございますけれども、確かに、そういう意味で、小児科の医師数については、東京都の例えば平均をとってみたときに、多摩地域、それから区の東北部も同様でございますけれども、やはり相対的に低いという状況がございます。
先ほど保健医療計画のお話がございましたが、その中では、一次、二次、三次という、そういう用語を使いますけれども、三次というのは非常に高度で、限られた医療資源を集中的に配置をして、ある意味、全都的なというか、広域的な対応を行う医療機能、それから、二次というのは、先ほど先生がおっしゃったように、入院等の機能を果たしていくということで、保健医療計画の中でも記載をしているところでございます。
先ほど来、お話を申し上げましたけれども、多摩地域のトータルとしての小児医療提供体制を、三次から含めた高度な医療機能を発揮するためには、小児総合医療センターを整備いたしまして、M−FICUですとかNICU等々の医療機能の整備を図っていくというのが一点でございます。
あわせまして、そうしたところの再編の中で、地域のところの部分ということでは、先般の第二回定例会の中で議決をいただきましたが、いわゆる小児の救急医療体制、二次の体制を構築するということで、多摩地区の五圏域において、主に相対的に医師の配置が低いところにつきましては、そこら辺の有意な病院と大学医局等の連携を図りながら、ドクターの確保を図り、医療提供体制を確保する、こうした措置を図っている、そういう状況でございます。
〇吉田委員
改めて確認をしたいんですけれども、これ、移転前と同じ状況になればいいんだということでなくて、区部と多摩の、この格差といって−−いいにくいのかもしれませんが、これをもっと改善して引き上げていかなきゃいけないんじゃないかなという、そういう問題意識もぜひお持ちをいただきたいと思うわけです。やはり、区部に対する多摩の、小児だけじゃないですけれども、医療資源不足、これを是正するというご認識を持っていただいて底上げを図る、こういうことが必要なんだと思うんですけれども、都はどういったビジョンで、この小児医療の確保、全都的な確保、特に多摩が非常に少ないんですが、これに取り組んでいくつもりなのか、お伺いします。
〇吉井医療政策部長
まず、小児医療の確保という側面で見てまいりますと、先ほど私の方でお話をさせていただきましたけれども、いわゆる小児科医師数が少ない地域に二次の医療を確保していこうと。二次の救急医療も含めてですが、確保していこうということで、事業名で申し上げれば、小児医療体制緊急強化事業ということで、多摩五圏域、それから区の東部、東北部、ここが相対的に少のうございます。区の真ん中、中央部あたりが、そこら辺のところでは相対的に高いという実情において、そういう医療提供体制を確保していこうということで実施をするものでございまして、ここのところでは医療提供体制と同時に、その提供体制が稼働するかどうかのポイントでございます医師の確保、こうしたところも大学の医育機関との連携をとりながら図るような形の施策を展開しているところでございます。
〇吉田委員
これから、ずっといろいろと質疑をさせていただきながら、今のご説明で、これで多摩は大丈夫だと、ちょっと思えないもんですから、今後、引き続き、何ができるのか、国にもいろいろと不備があると思うんですよ。そういうこともいろいろと、国に働きかけるべきこと。
予算も、やっぱり医療の分野に日本という国はもうちょっと資源配分しなきゃいけないんじゃないか、そういうようなことも含めて一つ一つ問題をクリアして、できれば、三病院の問題についても、何らか種が残るようにしていただきたいなと思うんですが、これは今、小児病院のことだけ申し上げましたけれども、救急医療や周産期医療も同じく都民の大きな不安になっております。
ちょっとこの問題についても、ざっくりとおっしゃっていただきたいと思います。
〇吉井医療政策部長
救急医療につきましては、その膨大な需要にこたえるため、迅速、適切な救急医療の確保に向けて、救急医療の東京ルールを定めたところでございます。
従来の救急隊などによります救急医療機関選定の仕組みに加えまして、地域で救急患者の受け入れ調整等を行います地域救急医療センター、これを指定いたしますとともに、こうしたことをバックアップするため、都内全域での調整を行います。救急患者受入コーディネーターを配置する、そうした仕組みでございます。
また、周産期医療につきましては、母体の救命措置が必要な重症妊産婦を必ず受け入れます、いわゆるスーパー総合周産期センター、これを都内三カ所に設置いたしまして、母体救命に成果を上げているところでございます。
さらに、中程度のリスクでございます、ミドルリスクの妊産婦に対しまして緊急診療を行う周産期連携病院、これを八カ所ほど整備したところでございます。
また、さらにこれらの取り組みを効果的に機能させるためということで、周産期につきましての搬送調整を行いますコーディネーターを、やはり同様に八月末、東京消防庁に設置をしたところでございます。
こうした救急周産期医療の取り組みによりまして、適切な救急医療体制を確保していきたいというふうに考えております。
〇吉田委員
いろいろと、本当に一生懸命取り組んでいただいていると思います。思うんですけれども、今お聞きをしている中でも、仕組みはつくっているけれども、ちょっと回ってないんじゃないかとか、そういうものとか、さまざま心配なことが実際起きているというふうに認識しておりまして、一つ一つ、これから、今後質疑をさせていただくことになると思うんですが、根本的に、先ほどちょっと前もっていってしまいましたが、我が国は、あるいは東京都は、社会保障、医療とか介護の分野を、ちょっと資源配分をしなさ過ぎる方向に政策が、かじが切られていたと思います。
これ、財政で心配だというご指摘をされる識者の方もおられるんですけれども、この問題の最後に、平成二十年度の厚生労働白書、これをちょっと紹介させていただくと、この白書の社会保障と経済、社会保障分野の生産波及効果、こういう文面があるんですね。社会保障分野の総波及効果が、乗数効果など、要するに経済に与える影響、これを見ると、我が国がこれまで、景気対策というと必ず主要な柱にしてきた公共事業などに比べて、社会保障の分野というのは、産業連関を見ると、総波及効果が高いんだと、白書でこう述べているんですね。
公共事業は四・一一四九と、こういう波及効果です。これに対して、保健衛生で四・二三〇八、それから社会福祉で四・二八八九、介護、これは居宅なんかだと四・二三三二、社会保険事業で四・一九二七、医療で四・二六三五と。
これは雇用でも同じで、雇用の誘発効果というのも、社会保障分野は公共事業などに比べてとても高いということを白書でいっているわけで、経済、財政、あるいは本当に本命の社会保障、この各面から見て、我が国は、あるいは東京都は、この分野に一生懸命資源を投入して困ることはないというか、経済にも雇用にも好影響で、そして国民はというか、都民は安全・安心な生活が確保できるということですので、僕はこの三病院をつぶすというような問題を皮切りに大きくかじを切っていただきたいなという思いを、ご要望を申し上げて、この問題をやめて、次の問題に移らせていただきます。
後期高齢者医療制度であります。後期高齢者医療制度、国の方もいろいろと動きがありますけれども、私から申し上げないで、現行制度を開始された経緯と現在までの経過について、改めて局の側からお伺いします。
〇宮垣地域保健担当部長
現行の長寿医療制度が開始された経緯と現在までの経過ということで、現行の長寿医療制度に先立ちます老人保健制度におきましては、高齢者が保険料を納める先の国民健康保険、社会保険等の保険者と、その費用を使って高齢者に給付を行う区市町村とが分離をしているということで、財政運営の責任の所在が不明確である。また、現役世代と高齢者世代の費用負担関係が不明確である。そして、被保険者の方の加入する制度や、お住まいの区市町村によって保険料額に高低が生じているということなどが問題として挙げられておりました。
現行の長寿医療制度は、これらの問題を解決し、国民皆保険を堅持しつつ、社会全体で高齢者を支える仕組みということで、平成二十年四月に創設をされたものでございます。
この制度開始後、保険料の軽減や保険料の納付方法についての年金天引きと口座振替との選択制を導入するなど、改善策が実施をされております。現在、国におきましては、長寿医療制度については廃止に向けて新たな制度を検討する予定というふうに聞いております。
〇吉田委員
いろいろ評価はしにくいけれども、とにかく今、現行制度廃止に向けて新たな制度を検討する予定であると、国はそういう状況だということです。
やっぱり新しい制度をつくるというに当たっては、旧制度の悪いところは正し、いいところは残し、旧制度よりも、より制度が改善されるべきであるんですが、都としてはどのような制度が望ましいと考えておられるのか、認識を伺います。
〇宮垣地域保健担当部長
高齢化の進展に伴い医療費が増大をしております中で、高齢者の方が安心して医療を受けられるよう、高齢者の医療保険制度におきましては、財政的に安定し持続可能であることや、世代間の負担が公平であることなどが必要と考えております。
そのため、制度を検討する上の課題としては、保険料や公費などの財源構成をどうするのか、制度の運営主体をどうするのか、そういった課題がございます。これらの課題につきまして、国民の納得が得られるよう、また、将来にわたり国民皆保険制度が維持されるよう、国の責任において十分に議論を尽くすべきと考えております。
〇吉田委員
全くそのとおりなんですが、一つだけおっしゃらなかったことが、これ、衆議院でも議論されたときに、諸外国の制度において、高齢者の医療を、高齢者だけ別立ての制度をつくるという例はまれなんですね。皆保険じゃない米国のメディケア、これ以外には諸外国に例はないと。
私はというか、我が党はといったらいいんでしょうか、高齢者だけ区切ってという制度は望ましくないんじゃないかなと思いますけれども、ご答弁いただいた内容は全くそのとおりなんで、我々も、そういう制度ができるように一生懸命に声は上げていきたいと思います。
この現行制度、問題があったと思うんですね。どのような提案要求を行ってきたのか、今後どのように取り組んでいかれるのか、伺います。
〇宮垣地域保健担当部長
都はこれまで、現行制度についてでございますが、国に対し、長寿医療制度の円滑な実施を図るため、被保険者などに対し十分な情報提供を行うことや、広域連合が安定した財政運営を行えるよう、また、保険料が他の医療保険制度に比べて過重なものとならないよう、国において必要な財源措置を行うことなどについて提案をしてまいりました。
今後につきましては、先ほども申し上げましたとおり、国において新たな制度を検討されるという予定と聞いておりますので、国における議論の動向を見きわめてまいりたいと考えております。
〇吉田委員
今、原則論というか、いろいろ教えていただきまして、それを踏まえて、いろいろと構築するように我々も頑張っていきたいと思います。