2006.3.17 : 平成18年財政委員会
〇吉田委員
皆様、お疲れさまでございます。
株価が回復をしてまいりまして、消費者物価も四カ月連続で前年比ゼロ以上となるなど、長く低迷を続けていました日本経済もようやく明るさが見えてきたと思います。
景気のこの回復基調は、都の財政においても税収増となってあらわれておりまして、まことに喜ばしいわけでございますが、こうした経済情勢の認識のもと、去る三月九日、日本銀行が、金融政策決定会合におきまして、金融政策の操作目標を、日銀の当座預金残高から、短期金利であります無担保コール翌日物金利、これに変更するという、いわゆる量的緩和政策の解除を決定したことが報じられております。
当面、ゼロ金利政策が続く見通しであるとはいえますが、平成十三年の三月に量的緩和という異例な政策を開始して以来、五年ぶりにオーソドックスな金融政策であります短期金利に目標を戻したというのは、大きな節目であることには間違いありません。仮に将来金利が上昇していくということになりますと、都債の利払い費というのも増加していくわけで、これは都財政に対する懸念材料の一つであると認識しております。
そこで、今般の日銀の量的緩和政策の解除という政策転換が実施されたという機会をとらえまして、都債の金利上昇リスクとそれへの対応策について何点か伺ってまいりたいと思います。
まず、都全体で都債がどれくらい発行されているのか、また、そのうち市場からの調達はどれくらいあるのか、お聞かせください。
〇安藤主計部長
平成十六年度におきます全会計の都債発行額は、新発債、借換債合わせて一兆三千四百四十九億円でございます。資金別の内訳は、民間金融機関、投資家等からの資金調達であります民間資金が一兆二千九百三十四億円、政府資金その他が五百十五億円となっておりまして、民間資金が九六%を占めてございます。
東京都は、他団体に先駆けまして民間資金へのシフトを進めまして、財投資金など公的資金に頼らない資金調達を行っております。民間資金のうち、そのほとんどが、債券を発行して広く投資家を募って資金を調達いたします市場公募債でございまして、その発行額は一兆一千五十七億円でございます。
〇吉田委員
都は市場公募債の発行によって、一兆一千五十七億円ですか、資金調達の大部分を、市場から調達しているというご説明でございました。
都道府県及び政令都市六十一団体のうち、市場公募債を発行しているのは都を初め三十五団体でございますが、格付機関、R&I、格付投資情報センター、それからJCR、日本格付研究所、この双方からダブルAプラス、こういう格付を、ことしの二月十日の段階ですが、格付を受けているのは、東京都と埼玉県、静岡県、京都府、仙台市、この五団体だけであります。市場の高い信任を得ながら自立した資金調達を実施しておられるというのは、都が規律ある健全な財政運営をされているということの証左でありまして、大変頼もしく思っております。
それでは次に、市場公募債の金利の推移、これについて、日銀の量的緩和政策の実施の前からさかのぼって、この金利の推移、お伺いしたいと思います。
〇安藤主計部長
毎月発行してございます償還年限十年の債券、いわゆる十年債の表面利率の推移で見てみますと、まず、平成十一年二月から十二年八月までの量的緩和導入以前のゼロ金利政策時には、一・八から一・九%を中心的な水準としまして、一・五から二・二%の間で推移をしておりました。
次に、平成十三年三月からの量的緩和政策期間におきましては、一・三から一・五を中心的な水準といたしまして、〇・五から一・八三%の間で推移をいたしました。
直近一年間で見ますと、昨年四月から七月までは一・三%前後で推移をしていましたが、八月以降、金利は上昇傾向となったところでございます。ことし二月からは量的緩和解除による金利上昇を先取りした動きが見られ、二月債は一・六三%と、一月債の一・四五%に比べ大幅に上昇いたしたところでございます。
〇吉田委員
ありがとうございます。
それでは、九日の量的緩和政策の解除を受けて、その後の都債の金利に変化がありましたんでしょうか。それをお聞かせください。
〇安藤主計部長
量的緩和解除後の三月十五日に条件決定をいたしました三月債の表面利率は一・七三%となりまして、二月債の一・六三%と比べて〇・一ポイントの上昇となりました。
〇吉田委員
ありがとうございます。
今のご説明を伺いますと、経済の回復基調や日銀の政策転換によりまして、これまでの歴史的な低金利に終止符が打たれて、金利上昇が現実的なものになってきているように思います。
日銀は、量的緩和解除後も、ゼロ金利政策は当面維持する方針であるとは聞いておりますが、この経済の回復基調が順調に続けば、量的緩和解除の次の段階でありますゼロ金利政策の解除、これが射程に入ってくることになります。このゼロ金利政策の解除が実施された場合には、都債の金利に対してどのような影響が出てくるとお考えか、お聞かせください。
〇安藤主計部長
日銀はゼロ金利政策を当面継続するということになっておりますけれども、市場では金利上昇への警戒感は強いものがございます。量的緩和が解除された後、市場の注目は、ゼロ金利政策の解除がいつどのような形で行われるかに移ってきておるようでございます。ゼロ金利政策が解除されれば、短期金利の上昇に伴いまして都債の金利も上昇する可能性がございます。このような状況を踏まえまして、金利の動向につきましては引き続き注視をしていきたいと考えております。
〇吉田委員
ありがとうございます。
それでは、金利上昇が都債の利払い費に与える具体的な影響についてお伺いをしたいと思います。
仮に金利が〇・一ポイント上昇したとしますと、東京都全体として利払い費はどの程度増加することが見込まれるのか、また、一%上昇したと仮定した場合はどうか、お聞かせください。
〇安藤主計部長
十八年度予算におきます全会計の都債発行額は、新発債、借換債合わせまして一兆一千四百四十九億円となってございまして、この十八年度発行分について長期金利が〇・一%上昇したと仮定して、その影響額を年間ベースで換算いたしますと、利払い費が約十一億円増加すると試算されております。次に、金利一%上昇のケースについて同様に試算をいたしますと、利払い費増加は約百十四億円となります。
なお、これらの利払い費の増加が継続すると仮定すれば、その影響額は年々累積していくことになるわけでございます。
〇吉田委員
金利が〇・一ポイント上昇すると利払い費は十一億円ふえる、また、仮に一%上昇するとなると、一年間で百億円を超える利払い費の増になるというご説明でございます。
実は、今度の二十二日には、出納長室さんにも運用面での金利の変化について影響をお聞きしようと思っているんでございますが、とにかく、全会計の単純合計で十二兆円を超える予算規模であります東京においても、百億円という利払いの増の数字というのは決して小さくはありません。
金利上昇が今後も見込まれるのであれば、長期的な視点に立って、資金調達の面から、金利上昇リスク、これに備える必要があると考えます。何か対策はお考えでしょうか。
〇安藤主計部長
償還年限が十年を超える超長期債におきましては、金利は十年債よりも高くなりますけれども、現在の低金利を将来にわたって享受できるというメリットがございます。借りかえ時の金利上昇リスクを分散して、資金調達コストを中長期にわたり安定的なものにする観点から、債券の年限の多様化を図るために、二十年債あるいは三十年債などの超長期債を平成十五年度から発行してございます。
このような年限の多様化を含め、今後とも、長期的なリスク分散の観点から、資金調達の多様化を引き続き進めていきたいというふうに考えてございます。
〇吉田委員
大変有効であると思います。
最後に、量的緩和解除という日銀の大きな政策転換を受けまして、金利上昇リスクが高まる中、将来の財政に支障を来さないよう、改めて、起債発行、そして償還を含めた都債の適切な管理が求められると考えますが、見解を伺います。
〇安藤主計部長
まず、起債につきましては、財政再建プランの実施の中で抑制を図ってまいりました。十八年度一般会計予算では、発行額、起債依存度とも、過去十年間で見ますと最低の水準にございます。償還につきましても、減債基金の積み立てによりまして将来の償還財源の確保に努めて、財政負担の平準化と都債の信用維持を図っているところでございます。
ただいま申し上げました、年限の多様化など発行面での取り組みを含めまして、今後とも、将来にわたり安定した財政運営を実現する観点に立ちまして、都債の適切な管理を継続していきたいと思っております。
〇吉田委員
ありがとうございます。
都は、国や他団体に先駆けて、起債の抑制や財政基盤の強化を図っておられまして、市場からも高い信任を得るような運営を行っておりまして、大変頼もしく思うわけですが、最後に一言だけ心配事を申し上げますと、ご存じのとおり、国は莫大な国債を抱えておりまして、金利上昇リスクに対して非常に弱い財政体質になってしまっております。国の財政再建が進まない中、苦し紛れ的に、都の財政見通しの前提となっている税財政制度をひっくり返すようなことを仕掛けてくるというおそれが、将来十分に考えられると思います。今後、そのような不測の事態も含めまして、より一層用心深いお見通しのもとで、また金利の動向に十分注意を払っていただきつつ、将来の利払い負担を考慮した長期的な視点での都債の管理、これを期待し、ご要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。