平成21(2009)年10月21日
厚生委員会
〇吉田委員
よろしくお願いいたします。
私からは、まず、指定確認検査機関への立入検査についてお伺いをいたします。
耐震偽装事件の発覚から、間もなく四年を迎えようとしております。事件を契機に建築基準法が改正され、平成十九年六月に施行されました。この改正は、耐震偽装の再発防止を目的として、建築確認検査制度の厳格化を柱とするものでありましたが、国における事前の準備不足や周知不足のため、法の施行後しばらくは現場が混乱して、建築確認の手続が停滞し、建築着工が大幅に落ち込み、官製不況を引き起こすなど社会問題化したことは、記憶に新しいところであります。
最近の建築確認件数の推移を見ますと、現在では法改正の影響はほぼ解消しているようでありますけれども、引き続き手続の一層の円滑化に取り組むことが必要であります。
他方、この法改正におきましては、民間の指定確認検査機関に対する特定行政庁の指導監督権限の強化も盛り込まれまして、特定行政庁にも立入検査権限が与えられました。建築確認検査業務が民間開放されてちょうど十年が経過し、今や建築確認件数の七割を民間機関が占めている状況であります。この建築確認検査制度の信頼性を確保するためには、指定確認検査機関の業務が適正に行われているかどうかしっかりと監視していくことが行政の重要な役割であります。
このような観点から、私は平成十九年二月の都市整備委員会で、民間の指定確認検査機関に対する立入検査について質問いたしました。それに対して、都からは、抜き打ち検査も含めて厳格に立入検査を実施するなど、指定確認検査機関の業務が適正に行われるよう取り組んでいく旨のご答弁がありました。
そこで、その後の取り組み状況等についてお伺いしたいと思います。
まず、指定確認検査機関に対する立入検査について、平成二十年度の実績をお伺いします。
〇瀧本市街地建築部長
指定確認検査機関への立入検査につきましては、平成十九年の改正建築基準法の施行以前から、都の指定した機関に対して指定権者の立場で実施してまいりました。
法の改正により、特定行政庁の立場で、国の指定した機関を含めて、都内で業務を行うすべての指定機関に立入検査ができるようになったことから、平成二十年度は、都の指定した二機関に加えまして、国の指定した機関のうち二機関の、合わせて四機関に対し立入検査を行いました。
〇吉田委員
ありがとうございます。
四機関に対しということで、この立入検査はどのような方法で行ったのか、抜き打ちで行ったのか、お伺いをいたします。
〇瀧本市街地建築部長
指定確認検査機関への立入検査には、定期的に行う検査と、違法な建築確認等の問題が判明した場合やその他の必要な場合に臨時的に行 う検査とがございます。平成二十年度に行った四機関への立入検査は、いずれも定期的な検査として実施したものであり、検査の日時をおおむね一週間前に通告 した上で行いました。
検査の内容としましては、当該機関の審査体制や役職員及び株主の構成などについて、建築基準法に定められた要件が満たされているかどうかといった従来の検査に加えまして、新たな試みとして、確認申請書類を抽出し、個々の建築確認や検査が適法に行われているかどうかの検査もあわせて行いました。
〇吉田委員
この書類の抽出検査に取り組み始めたということは、大切な一歩前進であるわけでありますが、検査の日時を事前に通告したということでは、これは抜き打ち検査ではないわけであります。これは一週間前に通告したということですが、一週間もありますと、もし問題があった場合に、慌てて一週間前に立ち入りあるぞとなったときに、改ざん、隠ぺい、偽装などの猶予を与えてしまう、こういう可能性があると思うんですね。
平成十九年の質疑では、抜き打ち検査も含め実施するとご答弁をいただいたわけでありまして、二十年度の立入検査において抜き打ち検査を行わなかった理由は何か、お伺いをします。
〇瀧本市街地建築部長
この立入検査でございますけれども、立入検査を抜き打ちで行った場合、相手方の確認検査員が現場検査等で不在であれば、業務内容に関する必要な聴取ができなかったり、あるいは申請書類が別の場所に保管されていれば、書類を取り寄せるまでに時間がかかったり、検査を行う上で種々の支障 が考えられます。
これに加えて、平成二十年度の立入検査は、特定行政庁の立場としては初めて実施するということもありまして、従来の方法により、事前に検査日時を知らせた上で行ったものでございます。
〇吉田委員
この検査を円滑に短い時間で行わなければいけないのではないかなと、こういうふうに思われる気持ちもわからないではありません。昨今の行政に 対する厳しい目、何を時間をむだ遣いしているんだとか、このようなおしかりを受けるようなこともあるのかもしれません。
しかし、今回の法改正は、二度と耐震偽装を引き起こさない、見逃さないという、我が国の建築物全体の信頼を取り戻すために行われた法改正であったんだと いうことを忘れてはならないと思います。実務上、いろいろとご苦労があろうかとは思いますが、検査の実効性、そして国民、都民から見た制度の信頼性を最優 先に大切に考えなければならないと思います。
指定確認検査機関に対する抜き打ち検査はやはり行うべきだと考えますが、改めて都の見解を伺います。
〇瀧本市街地建築部長
立入検査を行うに当たりましては、事前に通告した方が、相手方の確認検査員や申請書類が確保できるなど、確実な検査が可能でございます。
一方、事前通告なしに立入検査を行う場合は、例えば確認検査員がみずから行わなければならない現場検査を補助員に行わせていたなど、不適切な業務実態を把握できる可能性があるとともに、実際に検査に入る指定機関だけでなく、他の指定機関に対しても、日ごろから適正な業務を行う必要性を注意喚起する上で、 一定の効果があると考えております。
改正建築基準法の施行から二年以上が経過いたしまして、新たな建築確認制度が定着しつつあり、指定確認検査機関になれが生じている状況も想定されること から、抜き打ち検査を行う意義は高まっていると考えております。こうしたことから、今後の立入検査については、従来どおり、事前に通告して行う検査を基本とした上で、抜き打ち検査も適宜行うこととしております。
〇吉田委員
ありがとうございます。
建築確認検査制度は、建築物の安全性を確保するための根幹的な制度であります。指定確認検査機関の責任は大変に重く、それを指導監督する立場である都の責任もまた重大であります。今後とも、立入検査の実施体制を強化するとともに、抜き打ち検査もあるんだというこの緊張感を決して失わせない厳格な姿勢と方法で、しっかりと指導監督していただくことを要望いたしまして、この質問を終わります。