平成21(2009)年10月14日
各会計決算特別委員会
〇吉田委員
少し切り口を変えまして、次に中小企業の知的財産、よく短く知財と呼ぶことがございまして、私も知財と呼ばせていただきますが、この保護と活用という観点でお伺いをしたいと思います。
東京にはすぐれた製品開発力を持つ中小企業が多く集まっているということはいうまでもありません。しかし、これらの企業のすぐれた商品や技術が、はっきりいえば中国などの企業によって模倣され、中国の国内市場はもとより第三国の市場にも広く流通するという被害を多く聞きます。さらに近年では、日本国内に流入するケースもあり、自社の製品とそっくりな製品によって、自社の販売量を奪われるだけでなく、粗悪な模倣品による事故などによって、自社製品の品質に対する評価まで傷つくようなケースもあります。
このような事態に対応するには、企業があらかじめ海外でも、特許や商標、意匠など、知財権を取得するとともに、被害に遭った場合には速やかに被害の状況を把握して毅然とした対応をすることが必要であります。例えば、模倣品の被害を受けたある文具メーカーのケースでは、海外の模倣品メーカーの調査を行い、これをもとに現地の行政に申し立てを行った結果、行政処罰が下された。こういうようなケースがありましたけれども、このような対応を行わなければ、せっかくのすぐれた技術や製品、いろいろな投資を行った、あるいは努力をした、そういうものが、苦労をしてこれを開発した企業の利益に戻ってこない、つながらないということなんですけれども、多くの中小企業にとっては、そういう対応をとることは人材、資金の両面で大きな負担になって、なかなかそれができないと、わかっていてもできないという状況であります。
都としても、これを支援すべきと考えますが、どのような支援をしているのか、お伺いをいたします。
〇山手商工部長
経済のグローバル化が進む中、中小企業におきましても、海外での特許、商標、意匠をしっかりと権利化しまして、自社の技術、製品を守るための対策を講じておくことが重要となってございます。こうしたことから、都では平成十五年度に中小企業振興公社に知的財産総合センターを開設いたしまして、さまざまな相談に応じたり、国も含めた支援制度を紹介してございます。また費用面からも海外の特許や意匠、商標の出願について助成制度を設けて支援を行ってございまして、平成二十年度は合計九十二件、一億五千二百三十九万円の交付を決定しました。
また、実際に模倣品被害が発生した場合についても、平成十六年度より、外国における模倣品被害の事実確認調査を行う際の費用につきまして助成制度を設けまして支援を行ってございます。
〇吉田委員
商標や模倣品など、知財権の侵害被害が数多く報道されている中、今ご説明いただいた支援は今後ますます重要になってまいります。これへの支援策を用いようとする企業に、本当に積極的な支援をお願いいたします。しかし、残念ながら、この知財について前もって十分な戦略を持って対応せず、実際に問題が持ち上がってから対応を慌てて考え始め、結果的に時既に遅しということになる中小企業も多いという状況であります。
したがって、都としては、ただ相談窓口を開いて、中小企業が相談に来るのを待っているという姿勢では不十分であり、中小企業はこれらの支援策をより有効に活用して、みずからの製品、技術を守れるように、より東京都として能動的な支援を行うべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。
〇山手商工部長
知的財産の活用に当たりましては、より早い段階から対応を図ることが重要であると認識してございます。このため、知的財産総合センターでは、開設当初より、知的財産の重要性や戦略的な活用事例について紹介する知的財産シンポジウムを開催するなど普及啓発に取り組んでございます。
さらに、中小企業振興公社に新製品の販路開拓支援を依頼してきた中小企業に、知的財産総合センターの相談員が出向きまして、特許の取得を初め、知的財産面でのアドバイスを行うなど、より積極的な姿勢で中小企業に対して臨んでございます。
〇吉田委員
いろいろの支援をしているということはわかりました。しかし、まだまだ知財戦略について十分な取り組みができていない中小企業が本当に多いわけであります。さらに一層、普及啓発、制度のPRに注力していただいて、そして、そのいろいろの支援策、ご説明いただいた支援策、これを個々の中小企業がうまく活用して、戦略的に自社の製品、技術を保護できるようになるためには、これまた専門的な知識を持った人材の養成や組織的な知財への取り組み体制の構築などの能力の強化が必要だと考えられます。
中小企業のこのような能力の強化については、都としても積極的な支援を行うべきであるんですが、どのような取り組みを行っているか、伺います。
〇山手商工部長
中小企業が市場での競争優位性を築いていくためには、他社特許の動向を考慮した独自技術の戦略的開発や知的財産の取得、活用など、知的財産を戦略的に活用していくことが必要でございまして、各企業が知的財産戦略に組織的に対応できるよう、体質強化が求められてございます。このため、知的財産総合センターでは、各種のマニュアルの作成、配布を行うとともに、中小企業の経営者や知的財産担当者等に向けたセミナーを開催いたしまして、きめ細かいアドバイスを行ってございます。
さらに平成二十年度からは、独自の技術を有するものの、知的財産を戦略的に活用できない中小・ベンチャー企業に対しまして、社内体制の整備や知的財産戦略の策定につきまして、最長三年間にわたり、集中的、継続的にアドバイスを行う知財戦略導入支援事業を実施しておりまして、昨年度は十社に対して支援をしております。
〇吉田委員
るる都の取り組み状況について伺ってまいりました。きめ細かく、いろいろな施策を講じていただいていると思います。しかし、これは量という面で、さらに、まだまだこの都の施策の手が届いていない、こういう企業はあると思うんですね。ぜひこの質に、質だけでなくて量の面でも、さらに一層頑張っていただいて、この中小企業の知財の保護と活用、これを支援するということは、活力ある日本経済の維持発展のために死活的に重要だというふうに私は思います。さらに一層取り組みを進めていただくようにお願いをいたしまして、次の質問に移ります。