2005.12.08 : 平成17年_第4回定例会(第18号)
◯議長(川島忠一君)
五十二番吉田康一郎君。
〔五十二番吉田康一郎君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
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◯五十二番(吉田康一郎君)
まず初めに、少子化対策・子育て支援について伺います。
我が国の合計特殊出生率の低下は歯どめがかからず、昨年も一・二九と戦後最低であり、東京も一・〇一と全国で最低の値となっています。
国立社会保障・人口問題研究所による我が国の総人口の推計、中位推計は常に外れて下方修正されますが、低位推計、すなわち最も悲観的な場合には、このままいけば、二一〇〇年には、我が国人口は現在の三分の一の四千六百四十五万人、そしてそこで人口減少がとまると勘違いをしている人もいるようですが、そんな生半可なことではありません。その後も人口は、高齢者ばかりの逆ピラミッドのまま、四分の一、八分の一と減っていくことになります。
現在、我が国の借金は、国、地方合わせて一千兆円に及びます。この借金が、人口が三分の一になったときに一緒に三分の一に棒引きになるのかといえば、そのようなことはありません。生まれたばかりの赤ん坊から介護を受けている高齢者まで、一人当たり、今の三倍の三千万円近い借金を背負うことになる。しかし、そんなことは不可能です。経済は破綻し、財政も年金も破綻し、国民の生活も破壊される、介護の人手すらなくなる、そういうまさに国家存亡の瀬戸際にある、こういう危機感を為政者は持たなければいけないと考えております。
そして、その中で迫ってくる大変な問題の一つとして、経済あるいは労働力の担い手としての膨大な外国人の流入と、これへの依存の構造化ということがあります。
言論も政治も、国外からの軍事的圧力や経済依存のみならず、国内においても外国人居住者が巨大な社会的勢力となる中で、外国による不当な圧力や暴挙に対して、ノーということすら不可能になる。そういう悲惨な将来の姿が絵そらごとではないわけであります。
我々は、この我々の時代に、先祖から受け継いできた遺産を食いつぶすのではなく、この国のよき文化と伝統を将来にわたって受け継ぎ、誇りある日本人が国際社会の中で、次の世紀も、その次の世紀も活躍し続けられる、そういう国のあり方、そのための制度をつくり、残す責務があります。
少子化対策・子育て支援はまさに日本の将来の根幹にかかわる課題であり、現在、政治が取り組むべき最重要の課題であると考えます。
知事は、少子化対策について、フランスの事例などを参考にしたい旨を本会議で表明されました。まさしく炯眼であります。私が少し調べた範囲でも、フランスを初め欧州の先進国では、日本と同じように少子化に悩んだ末、子育てへの手厚い経済的支援を行っています。フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークなどでは、それぞれ子ども一人につき月額約一万四千円あるいは二万一千円の家族手当を十五歳あるいは十九歳まで出しており、その多くの国で、子どもの数がふえると手当の額をふやしています。例えばスウェーデンでは、第五子以降は約二万九千円の手当が出ます。
これにあわせて税負担の軽減を実施することにより、多くの国で出生率の低下に歯どめがかかり、あるいは出生率回復に効果を上げています。フランスでは、出生率は一・九二まで回復しています。
平成十七年版国民生活白書によれば、我が国においては、大卒の女性が定年まで就業を中断せずに働き続けた場合に比べ、二十八歳で退職して第一子を産み、三十一歳で第二子を産んで、一年後にパート・アルバイトとして再就職した場合、生涯所得の格差は総額二億二千百万円に上ります。この経済的損失は、無意識に認識が広がって、多くの若い女性にとって出産、育児を選択する制約になっていると考えられます。二人の子どもが生涯で仮に三億円ずつ、計六億円稼ぐとして、子育てによる機会費用を個人に押しつけていることで、社会全体としてはより多くの損失を招いている、こういうことになります。
また、出生動向基本調査によれば、夫婦にとっての理想の子どもの数より実際の子どもの数が少ない最大の理由として、六三%の女性が子育てや教育にお金がかかり過ぎると答えています。
さらに、少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査によれば、二十代前半は現金給付の拡大、二十代後半は医療費の無料化、同じ二十代後半から三十代後半は保育、教育費の軽減といった、子どもの成長に合わせた経済的支援を求める姿が明確です。まさに我が国では、子育ては損だ、報われないと感じて、子育てという選択をしづらくなる、あるいは三人目、四人目は無理だと思う、実際に育てている人は大きな負担を感じている、こういう現状にあります。
出産は、個人にとっては個人的な問題ですが、政治にとっては社会の仕組みをどうつくるかという問題です。子育てをする人の経済的な損失を縮小し、選択の幅をふやすことが重要であり、次の社会を担う次の世代を産み育てている人たちが不利にならないよう、社会全体として仕組みを整えていくことは当然のことだと考えます。
我が国においては、子育てへの現金給付のみならず、保育サービスを初めとする現物給付をあわせた子育て分野全体に対する国の予算が余りに少ない状況があります。OECDの基準による家族分野の社会支出の国際比較調査二〇〇一年によれば、我が国の家族分野への支出は、対GDP比で〇・六%しかないのに対し、フランスは二・八一%、スウェーデンは二・九二%、イギリスで二・二三%と、約四倍の格差があります。
我が国の児童手当については、去る五日の新聞報道によれば、自公与党が十二歳まで支給を拡大することで合意したとのことであり、私は歓迎いたします。
十一月二十九日、政府・与党は、三位一体の改革について、児童手当、児童扶養手当の国の負担をそれぞれ三分の一に引き下げました。理念なき数字合わせに終始したもので、国として責任を負うべき子育て支援をほうり出そうとしているものだと思います。
しかし、都としては、これを奇禍として前向きに取り組むべきだと考えます。都は、国に先駆けて、これまでさまざまな取り組みを実施してきました。児童手当制度も、歴史をひもとけば、一九七〇年代に都が先行実施したものを国が後追いで制度化したものです。知事も、認証保育所制度の創設を初め、区市町村の子ども家庭支援センターの設置促進など、時代に即応した施策を次々に講じてこられました。
今、我が国で、借金漬けで無責任かつ理念なき政府にかわって子育て支援に取り組めるのは、都しかないと考えます。幸い、各党の公約を拝見しますに、子育てへの経済的支援の抜本的拡充に前向きだと認識しております。国を愛し、国民を思うすべての人が協力し、この実現に取り組むことを念願するものであります。
知事がフランスに視察されるときは、ぜひ我々も同行させていただきたい。明治の岩倉遣欧使節団のように、欧州諸国のよい制度をすべて学びとり、国の形を変えるような改革を行う。あれをやるからこれをやらないということではなくて、有効な施策はすべて打つ。これは人への投資であります。人への投資が、この国の命運を握ります。国ができないのであれば、国に追随して滅びるのではなく、都がリードすべきであります。子育て東京革命、そういう意気込みが必要だと考えます。
それでは、この議場で議員として初めての質問をさせていただきます。
当代一級の政治家であり、透徹した視座と直感を持つ文化人でもある知事に、ぜひお伺いをしたい。この国の次の時代を担う次の世代を産み育てている人たちの経済的な負担感を初めとするさまざまな負担感を取り除くために、抜本的な施策の充実が急務と考えますが、いかがでしょうか、ご所見を伺います。
そして、その中で、いわゆる現物給付、すなわち保育サービスを初めとする多様なニーズへの対応が大変重要です。地域の実情に応じて子育てをサポートする多様な仕組みを整備していく必要があります。特に保育所においては、地域の子育て拠点として、一時保育や病後時保育、子育てひろばなど、多様なサービス提供も求められています。そのための東京都の支援の方法として、各自治体の創意工夫が十分生かせるような仕組みへと変えていく必要があります。
折しも、都は来年度、これまでの子育てに関する補助金を再構築し、新たに子育て支援の交付金制度を創設する方向と伺っています。また、子育てサービスの基盤整備のための包括補助制度を立ち上げようとしています。そこで、これに至った背景、またその基本的な考え方について伺います。
さらに、仕事と子育ての両立へ、支援が大変重要です。次世代育成支援対策推進法の施行に伴い、従業員三百一人以上の企業には行動計画の策定が義務づけられ、さまざまな取り組みが始まっています。しかし、全体の約八割の人が働く中小企業においては、依然として、長時間就労に加え、育児休業制度自体の定着も不十分です。
ことしの予算特別委員会での民主党の質問に対し、都は、仕事と子育ての両立支援を充実するため、中小企業に対する丁寧な働きかけが必要と答弁しました。都として、特にこうした中小企業に関する子育て支援について、国や中小企業に対する働きかけも重要と考えます。取り組み状況をお伺いします。
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次に、木造住宅密集地域の整備促進について伺います。
政府の中央防災会議の被害想定によると、首都直下で地震が起きた場合、首都圏で最悪一万三千人の死者が出るといわれています。火災が発生し、火災による多数の犠牲者が予想されています。
一方、東京都は、防災都市づくり推進計画において、木密地域の中で震災時に甚大な被害が想定される地域を整備地域として六千五百ヘクタール指定しています。このように、都内における木密地域は、震災時に火災が発生する非常に危険な地域であり、震災時の被害を減らすためには、木密地域における火災の発生や延焼を最小限に食いとめることが重要です。
そのためには、古い木造住宅の不燃化への建てかえや、消防車など緊急車両が進入できるよう、道路などの基盤整備を行うことが必要と考えます。木密地域においてこのような整備を効果的に行うためには、地域の中でこれまで形成されてきたコミュニティを活性化させ、まちづくりを推進する原動力として生かしていくことが大切です。地域の人々が住み続けながら整備を円滑に進めるには、自助、共助、公助の原則により、都、区、住民が連携し、協力することが重要であると考えます。
そこで、何点かお伺いします。まず、都の役割についてですが、木密地域の改善を図るためには、都が主体的に取り組んでいかなければならないと考えます。そこで、都がみずから事業の主体となって、現在どのような取り組みを行っているかを伺います。
次に、区に対する支援、指導についてですが、区は、木造住宅密集地域整備促進事業の主体として事業を実施しており、都は、区が行う整備に対し支援をしていると聞いています。改善が必要な地域の整備を効果的に進めるため、都は区に対し、より一層支援、指導を強めていくべきだと考えますが、都としてのお考えをお聞かせください。
一方、整備を進めるためには、地元住民の合意や協力も重要です。被害が大きいと想定される地域の住民が、自分自身に切迫した問題であると認識し、防災まちづくりへの意識を高めていかなければ整備はなかなか進みません。
民主党は、十七年第二回定例会で、都民に対する動機づけとして、地域危険度の周知について取り組むべきと指摘しました。そこで、さらに一層、住民の防災意識の高揚を図るため、効果的な方策について検討すべきと考えますが、所見を伺います。
最後に、被害の大きさだけでなく、首都直下地震の切迫性が指摘されている中、木密地域の改善を早期に進めることは、都の災害対策として最優先であると考えます。都が今後、この課題にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
◯知事(石原慎太郎君)
吉田康一郎議員の一般質問にお答えいたします。
少子化対策についてでありますが、少子化は、ある程度社会が豊かになり、高齢化が進んだ先進国においては、一つの歴史的なパターンとして、長期的に見ますと、一つのパターンとして例外なく進行しております。その背景は、それぞれの国家の成り立ちや社会経済システムなどによって異なりますけれども、いずれにしろ、これはもう本当に国家社会の安危にかかわる問題でありまして、少子化対策は社会全体で取り組むべき課題でありますが、経済的支援については、税制のあり方なども含めまして、国民的コンセンサスを得て、国の制度としてまず行うべきものであると思います。
都はこれまでも、認証保育所制度などの創設など、さまざまな施策を展開してきましたが、今後とも、すべての子育て世帯を対象とした支援策を積極的に推進していきたいと思っております。
ただし、これは非常に国家の安危にかかわる問題でありますから、金で済むことならやすいことでありますけれども、やはり行政による財政も含めての支援もさりながら、子どもの散財というものをどういうふうに価値的にとらえるか、親である自分自身の人生というものを、子どもとのかかわりでどうとらえるかという、一種の価値観の修正というものがそろそろ必要なんじゃないか。修正し、さらにそれを正しく造成していくことが必要であると思っております。
その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔福祉保健局長平井健一君登壇〕
◯福祉保健局長(平井健一君)
子育て施策に関する区市町村支援策についてのお尋ねでございます。
安心して子どもを産み育てられる環境を整備するためには、区市町村がそれぞれの地域の実情に応じて主体的に行う多様な取り組みを支援していくことが重要であります。しかし、既存の補助制度は、対象者や使途が細かく限定されているなど、必ずしも創意工夫を促す仕組みとなっていない面もあり、東京都児童福祉審議会からも、区市町村に対する補助制度については、子育て支援全般の充実に活用できる包括的なものとするよう意見具申をいただいているところでございます。
こうしたことから、区市町村の主体的かつ柔軟な取り組みに対して支援する仕組みを新たに構築しようとするものでございます。
〔産業労働局長成田浩君登壇〕
◯産業労働局長(成田浩君)
子育てしやすい労働環境の整備に関する国や中小企業への働きかけについてでございますが、急速な少子化の進行は、今後の東京の活力を維持する上で深刻な影響が懸念されることから、子育てしやすい労働環境の整備は重要であると認識しております。
このため、本年六月、都は国に対して、都内の多くの労働者が働く中小企業における行動計画の策定、実施の支援などを新規に要望したところでございます。
また、従来の労働相談や普及啓発に加えまして、新たな取り組みとして、中小企業の事業主を対象とした次世代育成支援のためのセミナー、相談会を来年二月に実施するなど、今後も支援を強化してまいります。
〔都市整備局長梶山修君登壇〕
◯都市整備局長(梶山修君)
木造住宅密集地域の整備に関する四点のご質問にお答えいたします。
まず、都の木密地域における取り組みについてでございますが、いつ起こるとも知れない大地震に備え、東京を災害に強い都市としていく上で、木密地域の改善は喫緊の課題であり、都が地元自治体や地域住民と一体となってその解決に取り組むことは重要でございます。
都はこれまでも、延焼遮断帯となる主要な幹線道路の整備を進めるとともに、都市改造型区画整理事業や防災拠点型再開発事業などによる安全な市街地の創出に努めてまいりました。また、都市計画道路の整備にあわせ、沿道のまちづくりを進めることで、地域の防災性の早期向上を図る取り組みを始めたところでございます。
今後、こうした取り組みを通じて、木密地域の改善に努めてまいります。
次に、木造住宅密集地域整備促進事業に対する支援、指導についてでございますが、この事業は現在、十九区、六十地区で実施されており、都は事業主体である区に対し、財政的支援を行うとともに、まちづくりの規制、誘導策などに関する技術的支援を行っております。
また、建物の共同化を推進するための仕組みの構築や、国に対する補助メニューの拡充要望などの制度改善にも取り組んでおります。
今後とも、区が積極的に施策を展開できるよう、支援、指導を行ってまいります。
次に、住民の防災意識の高揚についてでございますが、木密地域の整備を着実に進めていくためには、住民が災害に対するまちの実態を正しく把握し、自分のまちは自分で守る心構えを持って防災まちづくりに参画し、防災意識の高揚を高めることが何よりも大切でございます。
そこで、防災に関する的確な情報を都民に周知するため、都は、五年ごとに地域危険度調査を実施し、インターネットや広報媒体などを活用し、広く情報提供をしております。さらに、地元住民に事業の説明をする際には、震災時に火災が発生した場合の燃え広がる状況を、現在と整備後とで視覚的に対比できる延焼シミュレーションを用いるなどの工夫を凝らしてまいります。
こうしたさまざまな機会、手法を活用して、住民の防災まちづくりへの意識を高めてまいります。
最後に、木密地域の早期改善についてでございますが、首都直下地震の切迫性が指摘され、また中央防災会議においても甚大な被害が想定されていることもありまして、木密地域の早期改善を図ることは重要な課題であると認識しております。
都は、防災都市づくりの施策の指針と整備方策などを取りまとめた防災都市づくり推進計画を策定し、整備すべき地域の重点化を図るとともに、街路事業や木密事業などの各種事業を重層的に展開しております。
今後も、この推進計画に基づき、都と区が連携し、住民の理解と協力を得ながら木密地域の改善に取り組んでまいります。