平成20(2008)年9月16日
環境・建設委員会
〇吉田委員
私からもパンダの受け入れに関する陳情について若干質問し、意見を申し述べたいと思います。
ただいまこいそ委員からも大変にうなずける点ばかりの質疑がございましたけれども、私も子どものころに親に連れられてパンダ、当時、カンカン、ランランですかね、見に参りました。もみくちゃな中で一生懸命背伸びをしてパンダが奥の方にいるのを、あっ、いたいたと見た記憶がございます。
当時はハイビジョンもありませんでしたし、DVDもなくて、今は随分便利な時代になったなと、家の中で手にとるように見れるいい時代になったなと思うわけでありますけれども、この去る五月七日に福田首相と来日をした中国の胡首席との首脳会談においてパンダの貸与が合意されたとの発表があった後、都庁にも上野動物園にも抗議の電話が殺到し、上野動物園で直接抗議ポスターを張る人までいたということであります。
また、産経新聞の調査によれば、一万人を超す回答の中で貸与を受けることに反対の人が九一%、毎年一億円ともいわれる高額の貸与料を支払うことに反対の人が九七%、つまりほぼ全員、ほぼすべての人が反対だということでありました。
また、全く別のインターネット上の世論調査サイト、ここの調査結果を見てみましても、貸与に反対の意見が九五%、これもほぼすべての人が反対と、こういう結果が出ております。
この反対の理由を調べてみますと、詳細に出ております。パンダの政治利用に反対という意見が圧倒的でありまして、次に、友好親善をうたいつつお金を取るということについての反発、さらにその金額が一年間で百万ドルと予想されるという点が反対の考えを決定的にしているように思われます。
石原知事も五月十六日の記者会見において、何か友情のしるしとしてそれで金を取るというのはどんなものなのかなと。また、一億円といわれている金額について、随分法外な値段だと私は思いますねと述べています。
この案件について適切な判断と評価を行うために、まず、関連の事実関係を正確に把握しなければならないと思いますので、いろいろと伺っていきたいと思います。
まず、国際間において絶滅のおそれのある野生動植物の取引を行う場合にどのような制約があるのか、改めて伺います。
〇小口公園計画担当部長
国際間の制約についてでありますけれども、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を図ることを目的としてワシントン条約があります。ここで絶滅のおそれのある動植物を希少性、少なくてまれなことなんですけども、希少性に応じて取引を制限しています。
例えば絶滅のおそれのあるジャイアントパンダやニシローランドゴリラなどは、商業取引が禁止されていますが、学術研究のための受け入れなどは可能となっております。
〇吉田委員
これは絶滅危惧種、種の保存のために全く原則として当然のことだと思います。
では、現在、上野動物園、多摩動物公園で学術研究を目的に支援費を支払って貸与を受けている動物の事例があるのか、ある場合にその金額は幾らなのかをお伺いします。
〇小口公園計画担当部長
支援費の事例があるかというご質問でございます。
上野動物園で、キリンの仲間であるオカピは貸与期間中、年間五千アメリカドル、日本円に換算して約五十四万円、ニシローランドゴリラは貸与開始から五年間で年間一万アメリカドル、約百八万円を、スマトラトラは二百万円を野生生物保護の取り組みとして支援しています。
多摩動物公園には事例がございません。
〇吉田委員
最も高額なローランドゴリラの場合で年間約百八万円になるわけでございます。
次に、最近、上野動物園で購入した動物というのがあると思いますが、この価格は幾らなのか、お伺いいたします。
〇小口公園計画担当部長
平成十九年度に上野動物園で購入した動物は、すべて絶滅危惧種ではございませんけれども、価格の高い順でいいますと、オオアリクイが二百七十五万円、ツチブタが百万円、コビトカバが九十万円となっております。
〇吉田委員
どれも珍しいというか、大切な動物でありますが、一番高いものでもオオアリクイが二百七十五万円ということであります。
それでは次に、現在、都立動物園にいる動物で価格の高いもの、この上位三つはどのような動物で幾らなのか、お伺いいたします。
〇小口公園計画担当部長
現在、動物園にいる価格の高い動物の価格という質問でございます。
インドサイが三千万円、オカピが三千万円、ニシローランドゴリラが二千五百万円でございます。
この金額は東京都が購入、交換などをするために定めた価格でございまして、これらの動物は市場で流通してはおりませんので、この金額を支出すれば購入できるというものではございません。
〇吉田委員
一番高い値段のサイとオカピでも三千万円と。これは持っているときのというか、あるいは管理しているときの価格が三千万円というわけです。
先ほどご説明の中で、パンダの提供の仕組みが貸与方式となり、貸与を受ける際は繁殖などの共同研究や生息地の保全について支援することが国際的な取り組みになったというご説明がありました。一九九六年のワシントン条約の通達が出された背景は何なのか、お伺いいたします。
〇小口公園計画担当部長
先ほどこいそ委員との質疑の中でも申し上げましたけども−−この通達は、一九九三年、パンダ国際シンポジウムにおける合意を受けまして、ワシントン条約締約国での審議を経て出されたものでございます。
〇吉田委員
公式にはそうですが、これは中国の働きかけによってこういう取り決めがなされたというふうに理解をしております。
そして、ところで、我が国にとって大事な動物として、学名ニッポニアニッポン、トキですね。このトキについて、日本と中国の間でトキの保護、繁殖に関して協力が行われております。我が国で残念ながら絶滅してしまった日本のトキのかわりに、中国から発見されたトキ、日本が譲り受けていると。これに関して、日本は中国へODAでトキに関連した支援を行っているというふうに聞いております。
このトキの方に関して、日本は中国にODAで幾ら拠出をしているのか。これは買うとか貸与とかということではありませんが、関係する経済上のやりとりというか、外交上のやりとりということでお聞きをしたいと思います。
〇小口公園計画担当部長
トキの支援に関する中国へのODAについてのご質問でございますけれども、このODAは所管が外務省でございますので、内容については不明でございます。
外務省のホームページによりますと、一九九九年、トキ救護飼育センター拡充計画に約九百万円支出しており、二〇〇七年にトキ野生復帰計画のために約九百五十万円支出していると掲載されております。
〇吉田委員
いずれも過去二回ODAで支援している金額、一千万円に達さない金額ということであります。
これに対して、巷間いわれているパンダの支援費百万ドルという金額は、これはどこから出てきた数字なのか、確認のためにお伺いいたしたいと思います。
〇小口公園計画担当部長
五月の日中首脳会談後のマスコミ報道等で支援費が百万ドルという報道がされてきたことについて、どこから出てきたのかというご質問でございますけれども、その報道に関しましては、どこから出てきたのか、私ども、不明でございます。
なお、兵庫県神戸市の王子動物園は、飼育繁殖にかかわる中国との共同研究のための支援として、百万ドルを支出していると聞いております。
〇吉田委員
いろいろと希少な動物をお借りしたり、あるいは購入したり、こういう金額の相場観というか、こういうものをお伺いしてまいりました。
つがい一組で年間百万ドルとすると、今の為替レートで一億八百万円、一頭では年間五千四百万円。ほかの動物で最も高い支援費を払うローランドゴリラの場合、年間約一万ドル、百八万円ということと比べても、五十倍、百倍ということで、日本にとって国を象徴するようなトキ、これに関しての支援費がODA二回で、九百万円と、九百五十万円と比べても一けた高い。そして、上野動物園におりますサイ、オカピ、こういった上野にいる最も高いというか、動物の金額三千万円よりも、毎年支払う支援費の方が高いと。
貸与期間を十年に長期化して、繁殖等云々ということでございますので、十年払えば十億円。パンダの寿命は飼育をしている場合には二十年から二十五年ぐらい生きるということでございますので、すると、二十億円から二十五億円になると。非常に希少なほかの動物、サイとか、オカピとか、ゴリラとか、こういうものに比べていかにパンダが希少だといえども、この金額でならなければいけないというのはちょっといかにも高過ぎるのではなかろうかと、都民の感覚はあながちおかしくはないのではなかろうかという思いもいたします。
中国以外の国でパンダを飼育している国は何カ国かあると聞いてますが、どこかお教えいただけますでしょうか。
〇小口公園計画担当部長
中国からの貸与によりパンダを飼育している国は、アメリカ、ドイツ、スペイン、オーストリア、タイ、日本でございます。メキシコでは、一九九六年の通達以前に寄贈を受けまして、所有権を有しているパンダを飼育しています。
〇吉田委員
これらの動物園で幾らでお借りをしているのか、まだご確認をされていないということのようでございます。中国から支援費が幾ら求められるのかまだはっきりしていないと。相手方のお申し出を待っているような状況かなというふうにも受けとめているんですが、相手のいい値を拝聴する前に、まず、世界の動物園が一体幾ら、この六カ国ですね、支援費を中国に支払っているのか、皆が皆、毎年一億円ずつ払っているのか、これを調べるということは、やはり都税でもってこれからされていく、都民の納税者のお金で払っていくということであれば、これは調べることがどうしても説明責任として必要だと思います。これは強くお願いを申し上げます。
そして、冒頭に申し上げた世論調査などで示されている多くの国民、納税者の意見は、パンダの政治利用に乗っかって中国のチベット弾圧を初めとする少数民族圧殺、さまざまな人権じゅうりん、あるいは我が国への重大な国益侵害と不当な要求、異常な軍拡と膨張主義、覇権主義的な行為、これをあたかも我が国が問題視していないと、容認しているというような、中国にとって都合のよい誤ったメッセージを国際社会に与えることは望ましくないと、こういうご意見なのであります。
そしてさらに、受け入れるに当たって毎年一億円というのを支払い続けていくことには、これだけ国民の生活が今疲弊している中で、上野動物園の周りに住んでいる方で常日ごろ行ける方以外は、今苦しい中で、なかなか納得がいかないのではなかろうかなと、こういう状況ではないかと思います。
有名な旭山動物園、ここは、パンダはいませんけれども、非常に努力をされて、非常にすばらしい動物園と評価も高く、入場者もふえていると。
都として、パンダに依存するのではなくて、やはりきちんと努力をすることでこの動物園行政をしっかりとやっていく。こういう努力と気概が当然に求められていると思います。
私は地元で、おととい、きのうもみこしを担いで十何カ所か回ってきましたけれども、いろんな方にお会いする際に、最近はこのパンダの件についてもお伺いをしているんですけれども、一億円出しても来てほしいという方は一人もいらっしゃいませんでした。私がお会いした中で、一億円出しても上野にパンダが来てもらった方がいいんじゃないのと実際に私におっしゃったのは、この都庁で会った都議会議員の人だけでした。
その中には、パンダと、中国が今行っているさまざまな非人道的あるいは国際紛争行為は関係がないから分けて考えなきゃいけないんだよとか、好き嫌いでいってはいけないよとか、そういう一見分別があるような、そういうことをおっしゃる方もいるんですけれども、これは大変不思議なことをおっしゃるというか、私も学生時代には国際関係論、国際政治経済学というのをかじらせていただきまして、ギルピンとか、コヘインとか、キンドルバーガーとか、ウォーラスティンとか、ポール・ケネディとか、ジョセフ・ナイとか、九八年になりましたらハンチントンが出てきましたけども、いろいろ勉強させていただきましたが、どういうテキストを読んでも、ある国で起きること、起こすこと、決めること、受け入れたこと、これはどんなことでもすべては外交と国際関係に影響を与えるんだと。当たり前でございますが、そしてそれが当事国同士のやりとりであれば歴然として影響を与えると。影響が及ばないわけがない。こういうわけであります。
事は動物園行政の中で完結する話では今ない状態にあるんだということを都民も認識しているし、都にも認識していただかなければいけないんだと。それを切り分けて考えられるんだというのは、余りにもいいかげんなというか、考えなしなというか、そういう議論であろうかと思います。
中国自身がパンダを政治のけもの、政獣と呼んで、最も外交に有効な資源だと位置づけているわけであります。この中国が非常に国際的に摩擦を起こしながら、しかし、それをなだめるために使っているパンダ外交。こういうものについて、我が国としてきちんとした判断と対応をするということは、これは我が国の存立、将来の世代への責務でもあります。
中国、一党独裁政権の少数民族弾圧や人権侵害、こういうものを問題視するならば、ほかのそういった国から動物が入れられなくなるんじゃないのと、こういうご懸念をされる方もいらっしゃいました。
そこで、私はそれも調べてみました。イギリスのザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット、エコノミスト誌の関連の研究機関ですが、ここが発表している世界民主主義度数、こういうランキング、あるいはイギリスの経済平和研究所、こういうところが発表しております世界平和度指数、こういうものを見ましても、局から示していただいた動物の輸入、導入元国として、中国ほどに問題のある行為を行っている、あるいはそこで行っていることを我が国として等閑視して悪影響が及ぶ、そういう国から上野にしても多摩にしても動物を入れている例は、私の判断するところ、ございませんでした。
客観的な指標がさらに必要であれば、例えばアメリカは、世界の十大人権侵害国というのを毎年毎年発表しています。政治的に中国が外されました。これは大変不思議なことでもありますが、いろいろと判断の材料というのはそれぞれの状況で変わってくる、そういうこともあろうかと思いますけれども、私自身は、中国がきちんと民主化されて、今行われるような少数民族の弾圧とか、人権侵害とか、こういうことがないように一生懸命我が国として働きかけて、それが実現してから、あるいはチベットがきちんと民族自決権を行使できるような、そういう状況になってから正々堂々と国際社会に侮蔑を受けないような形でパンダの受け入れをする、こういうことが我が国にとって望ましいのではないかな、このように思いますし、この一億円、これはたかが一億円かもしれませんけれども、とても大きな一億円でもございます。
我が国は、先ほどこいそ委員もおっしゃっていたとおり、政府開発援助、それから輸銀ローン、こういうものを合わせて六兆円を中国にずっと援助してまいりました。本で「中国ODA6兆円の闇」と、これは何に使われているかわからないんだと、こういう本も出ておりますが、あるいは、中国遺棄化学兵器、遺棄なんかしていなくてきちんと中国側に引き渡したんだという文書も出ておりますけれども、こういうことに使われているお金も大変な汚職やら腐敗やら、日本側にもある。あるいは、四川の地震のときに日本は義援金を五億円出しました。そのほかにもさまざまな方が支援をしましたけれども、テレビ映像で見ましたけれども、現地の市民の方が当局に援助物資を渡さないでくださいと。全部とられちゃうんですと。地方の共産党の中堅の幹部ですとか、あるいは軍ですとか、こういうところが流用しちゃう。ちゃんと人々に届かない。これがパンダだけ全額きちんと保護に使ってもらうようにしていくというのは、大変に日本として手の届かないというか、検証の難しい、そういう内容でもあるんじゃなかろうかなと、このようにも思います。
これまで六兆円も出してきた。あるいは、今ご説明のあったとおり、パンダミルクとか、あるいは人工授精のやり方とか、日本側としてもパンダの保護のために一生懸命に努力してきて、中国側に技術を譲り渡してきたものもある。ここで、それはそれ、これはこれで一億円毎年もらっていきますよと。これは国民として、都民として、なかなか難しいんじゃなかろうか。
中国側もああいう国ですから、そこは本当に友好のためであるので、そういうことはそういうこととして、何かきちんと行って来いで、結局ただにしていただけるような、ただで本当の友好を示すために譲っていただく、お貸しいただくということであれば、私もそれは本当のお気持ちなんだなと、あえてそれは反対はいたしませんけれども、ぜひ世論調査もきちんと都として都民に対して行っていただいて、都民の大切な税金をちょっと相場と外れたような印象も受ける、こういう使い方でパンダを受け入れるということについて、極めてタフな交渉を中国側にしていただきたい。このように申し上げて、私からの要望と意見を終えさせていただきます。