平成20(2008)年3月17日
環境・建設委員会
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〇吉田委員
私からは、まず、生物多様性の保全の問題から伺ってまいりたいと思います。
皆様ご存じのとおり、人類のさまざまな活動の増大によりまして、地球全体での生物種の絶滅が加速度的に進行しております。
国連の地球規模の生態系評価によれば、人類は、自然に起きる絶滅と比べて、百倍から千倍もの速い速度での種の絶滅をもたらしていると試算をされており、我が国の環境白書にもこれは記載をされております。
この絶滅の速度は、環境省の生物多様性センターのホームページを見ますと、一九〇〇年ごろには一年に一種であったものが、一九六〇年ごろには一年に千種が絶滅し、一九七五年以降は、毎年四万種が絶滅している、このように試算されております。
さらに、昨年十二月にインドネシアのバリで開催されましたCOP13、気候変動枠組条約第十三回締約国会議においても議論をされましたように、地球規模の気候変動、温暖化は、非常に甚大な影響を世界各地域の生態系に及ぼすことになり、もちろん人間にも大きな影響が出るわけでありますけれども、地球上のすべての地域において、生物種の絶滅をさらに大規模なものにさせるということが予測されております。
昨年七月の段階で百九十カ国が生物多様性条約を締結しておりますが、条文の前文にもあるように、生物多様性については、生態学上、遺伝上、社会上、経済上など、さまざまな面からその価値が述べられており、地球規模で生物多様性を保全することは、人類の生存にとって極めて重要であると考えておりますが、都として生物多様性並びに多様な生態系の保全の必要性についてどのように認識をしているのか、改めてお伺いいたします。
〇中島自然環境部長
ただいまご質問にもありましたけれども、生物の多様性に関する条文の前文におきまして、現在及び将来の生態のため、生物の多様性を保全していくことの意義やその決意が述べられております。
生物多様性は、地球上に生命が誕生して以来、進化と分化を続けながらつくり出されてきたものでございまして、生物多様性の確保は、食物連鎖や生態系など、生き物同士のつながりや、世代を超えた命のつながりを維持する上で重要なものであると認識しております。
また、生物多様性の保全は、野生動植物のみならず、食料を含めまして生物資源をさまざまな形で持続的に活用する私ども都民にとりましても大変重要であると考えております。
〇吉田委員
ありがとうございます。
これに関連しまして、先月、私も委員を務めております東京都自然環境保全審議会におきまして、鳥獣保護事業計画の審議が行われました。鳥獣保護事業計画は、鳥獣保護法に基づいて、各都道府県によって策定されるものであります。この鳥獣保護法は、これまで大幅に改定されてきたとはいえ、もとを正せば明治時代に制定された狩猟法がベースになっており、その時代に求められた法の目的や考え方が色濃く残っているものであります。
生物多様性の保全が人類社会全体の重要な課題となる中、保護すべき生物種は、何も鳥獣に限定されるものではなく、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、植物、微生物など、さまざまなものがあるわけであり、また、それらのさまざまな生物種を生態系として保全していくことが東京都においても必要であると考えますが、所見を伺います。
また、その保護すべき生物種、保全すべき生態系が都内のどこにいるのか、あるのか、その賦存状況をきちんと把握することが重要であると考えますが、所見をあわせて伺います。
〇中島自然環境部長
生物は、相互にさまざまに関係しながら、自然環境の基礎となる生態系を形づくっておりまして、お話の鳥類、哺乳類だけでなく、爬虫類、両生類、昆虫など、さまざまな生物を保全していくことは、生態系のバランスを維持する上で重要であると考えております。
都は、これまでも保全地域の指定ですとか、開発許可や環境影響評価等によりまして、野生動植物の生息、生育空間の保全や、希少動植物の保護に向けました具体的な取り組みを推進してまいりました。
これらに加えまして、今後、さまざまな生物種の保護を図るために、その基礎資料となる希少野生動植物のリストでございます、いわゆる東京都版レッドデータブックを改定してまいります。
〇吉田委員
ありがとうございます。
ただいまご答弁がございました東京都版レッドデータブックでございますが、昨年十一月の本委員会において、また、十二月十二日の本会議の一般質問におきまして、改定を求める私の質問に対して、改定を検討しているというご答弁もいただいております。現在、改定に向けた検討状況はどのようになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
〇中島自然環境部長
東京都版のレッドデータブックでございますけれども、これは平成十年の策定後、一定の年数が経過してございます。このことから、改定に向けた検討を進めてまいりました。
来年度夏までに、研究者等で構成する検討会を設置いたしまして、調査方法等について検討した上で、文献調査、研究者等からの聞き取り調査を行いまして、その結果を踏まえて、必要に応じた現地調査も行っていくことを計画しております。
〇吉田委員
ありがとうございます。来年度から早速、改定に向けた調査に取りかかるということをお聞きして、大変にうれしく、喜ばしく思っております。野生動植物の調査というのは、相当手間も時間もかかるものだと承知しております。しかし、非常に重要な調査でありますので、しっかりとお取り組みをいただきたいと思います。
そしてまた、同じく昨年の第四回定例会におきまして、この改定に向けて、都民などから希少野生動植物に関する情報提供を求めて蓄積する仕組みについても私は要望いたしまして、それを検討しているというご答弁もいただいております。こちらについての検討状況についてもお聞かせください。
〇中島自然環境部長
保全地域におきまして保全活動を現に行っておりますボランティア団体、この二十五の団体に対しまして、緑地保全活動団体情報交換会、この場におきまして、来年度の調査に向け、希少動植物の生息、生育状況に関する情報の提供について依頼を行ったところでございます。
今後、都民、ボランティア団体、それから研究者、研究機関等から情報提供を受ける仕組みにつきまして、研究者等の意見を聞きながら、さらに検討していきたいと考えております。
〇吉田委員
ありがとうございます。冒頭に、この意義についてご答弁いただいたとおり、生物多様性の保全は都民にとっても非常に重要であります。そして、その多様性の保全を図っていくためには、その基礎となるレッドデータブックのきちんとした調査、そして策定が不可欠でございます。
この東京都版レッドデータブックの改定に向けて、取り組みを着実に進めていただくとともに、それをベースに、この都内においても生物の多様性がしっかりと保全されていくことを強く期待を申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
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次に、家庭ごみの処理費用の負担の問題についてお伺いをいたします。
循環型社会への変革を進めるとともに、低炭素社会を実現するためには、廃棄物の発生抑制と再資源化に最大限の努力をすることが重要であります。
産業廃棄物については排出者に処理責任が課せられ、事業系一般廃棄物についても排出者に一定の費用負担が課せられているわけでありますが、家庭ごみにつきましても、排出者に対して適正な費用負担を求める家庭ごみ有料化制度が、排出者の当事者意識を高め、また、減量努力を経済的利益として享受でき、費用負担の公平化にもつながることから、ごみの減量化施策として全国の多くの自治体で実施をされているところでございます。
そこでまず、都内における家庭ごみ有料化の実施状況と、ごみの減量効果について、都はどのように把握をしているのか、お伺いいたします。
〇森廃棄物対策部長
都内におきます家庭ごみの有料化につきましては、多摩地域の十八市町及び大島町で実施されており、二十年度からは新たに多摩市が実施を予定しているところでございます。
都が昨年調査した結果では、有料化実施前と平成十七年度のごみ量を比較したところ、すべての市町で減少しており、その減少割合は平均で二一%でありました。また、有料化を実施した市町のリサイクル率は平均で三一%であり、全国平均の一九%を大幅に上回っております。
〇吉田委員
ありがとうございます。今、多摩地域では、今お聞かせいただいたように、さまざまな有料化を実施している自治体があり、そして、ここでごみ量が、すべての市町村で減っているということでございました。
十八の自治体が有料化を実施していると。この背景には、多摩地域の二ツ塚処分場の延命化のため、各市町村が積極的にごみの減量施策として家庭ごみの有料化に取り組んだという事情があったと、そのように伺っております。
一方、私もおります二十三区の方では、事業系ごみの有料化は実施していますけれども、家庭ごみの有料化は進んでおりません。
しかし、有料化されていないといっても、実際には、自治体が家庭ごみを処理するに当たっては相応の費用が発生しており、それを税で賄っているわけで、ごみを出す量と関係なく一律に徴収した税金で処理をしているということで、これはごみをたくさん出す人も、ごみを少ししか出さない人も、同じ金額の負担をしている。
いい方を変えれば、ごみを少ししか出さない人が、ごみをたくさん出す人の分の処理費用まで税で払っているということでありまして、これはある意味で不公平だというふうに考えるわけでございます。
もちろん、家庭ごみの有料化によって自治体として増税になるべきではありませんで、税制中立となるように工夫をすべきでありますけれども、二十三区は、現在、サーマルリサイクルや焼却灰のスラグ化などによって埋立処分量の削減に取り組んでいることは評価いたしますけれども、今後は、さらに家庭ごみの有料化、こういうことを実施して、ごみの発生抑制を図ることが必要だと私は考えます。
これに関連して、現在、都が埋立処分場で受け入れている産業廃棄物の処分料金は、一トン当たり九千五百円で、埋立処分原価とほぼ均衡していますけれども、二十三区から徴収している一般廃棄物の処分料金は、政策的に、処理コストが約三分の一、一トン当たり三千五百円に抑えられております。
そこで、都が処分場の受け入れ料金を処理コストに見合う水準に引き上げますれば、各区はごみの減量を進めるために、家庭ごみの有料化にも積極的に取り組むようになるのではないかと考えますが、所見をお伺いします。
〇森廃棄物対策部長
廃プラスチックのマテリアルリサイクルやサーマルリサイクルなどによりまして、今後、埋立処分量は大幅に削減される見込みでございます。このため、処分場の受け入れ料金を引き上げましても、そのまま有料化を促すことにはなりにくいと考えております。
しかし、循環型社会への変革を進めるためには、家庭ごみの有料化によるごみの発生抑制は大変重要でございます。このため、平成十八年度に策定した東京都廃棄物処理計画において、家庭ごみの有料化促進を掲げております。
都は、区市町村に対して、都内における有料化の導入事例や、ごみの減量効果などを調査分析した家庭ごみ有料化実態調査報告書をまとめ、提供しており、家庭ごみの有料化を促しているところでございます。
〇吉田委員
ありがとうございます。家庭ごみの有料化を促しているということで、これは歓迎するわけですが、ご答弁の中で、都の処分場の受け入れ単価を引き上げても有料化のインセンティブにはなりにくいというようなご認識であったかと思うんですが、これは経済原則からすれば、やはりそういうインセンティブになっていくのではないかなと私は考えております。
また、有料化を既に実施している市町村でも、ごみ処理にかかっているコストと比べれば、その一部しか手数料に反映をさせていないようであります。こういう場合には、市民は、ごみを出すと自治体はこれだけ処理の費用がかかるんだという真の理解と、排出のコストという痛みを感じることができないわけであります。コストをきちんと手数料に反映させることが、個人個人のごみ減量努力というものを促すために必要だと考えます。
繰り返しますけれども、家庭ごみの有料化によって、自治体として増収にするということが目的なのではなくて、税制中立となるように工夫をして、また、経済的弱者への配慮も別途行うべきでありますけれども、ごみの排出には適正な費用負担を求めていくということで削減努力を促すべきではないか、このように考えます。
そこで、都としてガイドラインを作成するなどして、区市町村が家庭ごみの有料化の実施を検討する際には、処理費用に見合う金額を手数料に反映させるよう働きかけるべきではないかと思うわけでございますが、所見をお伺いします。
〇森廃棄物対策部長
手数料の額につきましては、ごみを排出する住民に身近な基礎的自治体である各区市町村が、地域住民のコンセンサスを得ながら、条例に基づき、みずから設定するものでございます。各区におきましても、既に審議会に家庭ごみの有料化を諮問するなど、活発な論議が行われております。
広域自治体である都は、今後とも、区市町村においてより大きな排出抑制効果が期待される家庭ごみの有料化が行われるよう、必要な支援を行ってまいります。
〇吉田委員
ありがとうございます。
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次に、先ほど高橋委員からもご質疑がございましたけれども、ICタグによる追跡管理システムについて、私も、一つご質問を申し上げたいと思います。
都はこれまで、感染性廃棄物の不法投棄の防止を図るために、平成十七年の十月から、都内の病院を対象に、ICタグを活用した追跡管理システムの普及を図っておられ、これを評価するものであります。
しかし、感染性廃棄物は、病院以外にも、大学、研究機関、製薬会社の研究室などからも排出されまして、これもまた適切な管理が必要なことは同様であります。そこで、これらの排出事業者にも、この追跡管理システムを普及させるべきだと考えます。
また、この追跡管理システムは、感染性廃棄物だけでなく、他の有害な産業廃棄物等の追跡管理にも有効であり、また、このようなシステムを個々の廃棄物ごとに開発、運用するのではなくて、共通のシステムで管理、運用する方が、はるかに合理的かつ経済的であると考える次第でございます。
そこで、まず、ICタグを活用した追跡管理システムを、病院以外の感染性廃棄物の排出者に普及することについてどう考えるか、次いで、感染性廃棄物以外の廃棄物への拡大についても、これが考えられるかどうか、都のご見解を伺います。
〇森廃棄物対策部長
ICタグの追跡管理は、産業廃棄物の不法投棄防止に有効であります。まず、感染性廃棄物の排出量の多い病院から、ICタグによる追跡管理システムの普及を図ってまいります。感染性廃棄物の排出量が少ない大学、試験研究機関などにつきましても、システムの導入を働きかけてまいります。
感染性廃棄物以外でも、廃棄された有害な薬品や機密文書など、専用の容器で収集運搬され、処理施設に直接投入される廃棄物には利用することが技術的には可能であります。
利用対象拡大の検討に当たりましては、感染性廃棄物以外の廃棄物へのニーズや、読み取り装置などの追加投資の費用対効果を見きわめてまいります。
〇吉田委員
大変前向きなご答弁、ありがとうございます。ぜひ可能な限り、進めていただければと思います。
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次に、レアアース、レアメタル、こういったものについてのリサイクルという問題についてお伺いをいたしたいと思います。
今日、レアメタルやレアアースは、IT製品や自動車などの高機能製品の製造には必須の素材であります。
しかし、このレアメタルやレアアースの産出国は限られておりまして、特にレアアースについては、世界の生産の九割以上を中国が占め、しかも、その寡占状況は、近年ますます強まっております。
我が国も、需要の九割を中国からの輸入に依存しておりますけれども、この中国は、レアアースを国家戦略物資と位置づけて、かつて輸出奨励策を行っていたんですが、これを転換し、輸出量の規制、輸出関税の導入など、規制強化を進めて、世界の需給、価格動向に多大な影響を及ぼしており、今後もさらに規制強化を行う姿勢を見せているなど、安定供給に大きな懸念材料があります。
もとより中国は、大変残念なことですが、思想、言論、表現、結社の自由のない一党独裁の国家でありまして、我が国に核ミサイルの照準を合わせつつ、二十年間連続で国防費を前年比二けた増という異常な軍拡を続け、そして、チベットやウイグルなど少数民族を弾圧し、東シナ海のガス田の問題や、尖閣諸島の問題、あるいは毒入りギョーザの問題など、枚挙にいとまがないんですが、非常に独善的で覇権主義的な行動をする国家であります。
我が国にとって非常にカントリーリスクが高い国でありまして、この国への資源の依存度を下げ、供給源の分散、多角化を図ることは、非常に重要な課題だと考える次第であります。
先日の本会議の質疑で、レアメタルを含む携帯電話のリサイクルについてご答弁がありましたけれども、自治体が不燃ごみとして処理しているごみの中には、デジタルカメラや携帯ゲーム機など、小型の電子機器や蛍光管なども含まれております。これらの製品に含まれているレアメタルやレアアースを資源として活用するべく、回収に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
〇森廃棄物対策部長
東京には膨大な産業、人口が集積しており、不要になった製品からレアメタルやレアアースを回収し、資源として再生すれば、世界でも有数の埋蔵量を有する、いわゆる都市鉱山になり得るものと考えております。
今回、携帯電話につきましては、関係業界による回収システムを活用して、リサイクルの促進を図る計画でございます。その他の電子機器につきましては、既存の回収システムがなく、新たな回収システムを構築するには膨大な費用を要するとともに、レアメタルやレアアースの効率的な抽出技術の開発が必要であることから、その動向の把握に努めるなど、導入の可能性について研究してまいります。
〇吉田委員
こちらも前向きなご答弁、ありがとうございます。
今おっしゃったとおり、都市鉱山、廃棄物から大切な資源を回収するということは、地球環境の保全の観点からも、日本の資源の安全保障の観点からも、ぜひこれは実現をすることが望ましいことでございます。技術の開発の動向も含めて、都として一生懸命に、これが回収できるようにお取り組みをいただければと、改めてお願いを申し上げまして、私からの質問を終わります。ありがとうございます。