厚生委員会 (身体障害者手帳の不正取得について)

平成22(2010)年3月17日

厚生委員会


 次に、身体障害者手帳の発行に係る点についてお伺いします。
 平成二十年、札幌市において、聴覚障害の−−耳ですね、身体障害者手帳を集団で不正取得したという事件が起きました。この事件は現在公判中でありますけれども、手帳の申請に必要な診断書、意見書に虚偽の記載をしたとして、医師についても詐欺罪など、これが起訴をされています。
 まず、この事件の概要と、それから、不正に受給、減免された疑いのある障害年金や税金等の総額についてお伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 この事件は、札幌市の耳鼻咽喉科の医師や社会保険労務士らが関与して、聴覚障害の身体障害者手帳や障害年金などを不正取得していた疑いのある事件で、現在公判中でございます。
 不正に支給、減免されたと疑われる障害年金や医療費助成などの公金は、新聞報道等によりますと、十億円を超えるとされております。

〇吉田委員
 十億円を超えると、これまたびっくりする金額でありますが、何をすれば十億円というか、身体障害者手帳を取得することによって受けられるサー ビスはどういうものなのか、では、お伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 身体障害者手帳の取得により受けられる主なサービスとしましては、所得や年齢、障害程度等により異なりますが、自立支援医療費 の公費負担や税金の控除、交通運賃の割引などがございます。

〇吉田委員
 わかりました。このような身体障害者手帳の不正な取得というのが東京都においても起こり得るのではないかと、このように懸念するわけですが、 まず、身体障害者手帳はどのように交付をされるのか、そして、実情として手帳の交付数がどの程度なのか、お伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 身体障害者手帳の申請は、区市町村を経由して心身障害者福祉センターに申請することになっておりますが、申請に当たっては、身体障害者福祉法第十五条に規定する指定医師が作成する診断書、意見書が必要となっております。
 診断書、意見書等を心身障害者福祉センターの医師等が審査した結果、等級に疑義がある場合や身体障害に該当しないと思われる場合には、東京都社会福祉審 議会身体障害者福祉分科会に諮問をし、その答申結果に基づき認定するなど、関係法令に基づく厳正な手続により交付をしているところでございます。
 また、身体障害者手帳の交付数でございますが、平成二十年度の新規交付数は二万六千八百六十八件となっております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。では、今ご答弁のあった、等級に疑義があるなどして審議会に諮問を行ったという件数はどれだけあるんでしょうか。

〇芦田障害者施策推進部長
 身体障害者福祉分科会に諮問をした件数でございますが、平成二十年度は五百十件となっておりまして、そのうち身体障害に該当しない非該当とされたものが三百七件となっております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。二万六千件のうち五百十件が審議会にかかって、うち三百七件は該当しないと、こういうご答弁でもあり、厳正な手続とご 答弁いただいたんですが、東京都において、先ほど冒頭に申し上げた札幌市のような身体障害者福祉手帳の不正取得、こういう実例ですね、これは東京都として あるんでしょうか。

〇芦田障害者施策推進部長
 札幌市の事件は、指定医師や社会保険労務士などが関与をして身体障害者手帳の不正取得をした疑いのある事件で、当該医師は、既 に診断書、意見書等の適正さが疑われる事実が判明をして、指定医としての信頼性や適格性を欠いているとの理由から指定医の取り消し処分を受けております。 東京都におきまして、身体障害者手帳を不正取得した事例はございません。

〇吉田委員
 この仕組みで、指定医が関与すると。指定医師や社会保険労務士などが関与してこういうことが起きるんだと。東京都では今のところ事例はないと いうか、意地悪ないい方をすれば発覚していないというか、いうことでありますが、東京都では、この指定医は何人いらっしゃるんでしょうか。そして、先ほど の身体障害者福祉法第十五条に規定する医師の指定を取り消したと、こういう実績、実例はあるのか、お伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 指定医につきましては、障害種別ごとに指定をしておりますが、平成二十二年二月二十八日現在、延べ一万二千四百十四人となっております。また、確認できる過去三カ年において取り消した例はございません。

〇吉田委員
 今、文書の保存年限が三年ということで、過去三年ということなんだと理解しておりますが、身体障害者手帳の交付の後、明らかに障害の程度が軽 くなるということは、やっぱり人間の体ですからあるわけですね。こういうケースの場合に、これは都として対処の方法はあるんでしょうか。

〇芦田障害者施策推進部長
 手帳の交付事務が機関委任事務から自治事務に移行したことに伴いまして、平成十四年度から、手帳交付事務のより一層の適正化のため障害再認定制度を実施しているところでございます。
 障害再認定制度は、発育や医療あるいは機能回復訓練等によりまして、手帳交付時に比べて障害程度に変更が生じることがあらかじめ予想される場合は、手帳交付時に再認定の期日を指定いたします。指定をした再認定の期日までに区市町村に診断書、意見書を再度提出して、区市町村長が審査をした上、障害程度に重 大な変化が生じたと認めたときには、知事が手帳の再交付を行います。当初、再認定を要しないとされたものであっても、区市町村が必要を認めれば審査を行い、その結果に基づいて再認定を実施いたします。再認定に係る審査に応じない者については、知事に通告をして、知事は手帳の返還を命ずることができるとされております。

〇吉田委員
 今ご説明のあった、手帳交付時よりも障害の程度が軽くなるような変更があった場合、障害再認定制度というのがあるということでありますが、最後にご答弁のあった、当初、再認定を要しないとしたものでも、区市町村が必要を認めれば審査を行って再認定を実施すると。
 実際に、当初、再認定を要しないとされて、その後、区市町村が、いや、これはやっぱり機能が多少回復したんじゃないかとか必要性を認めて審査を行った実 績がどれだけか、お伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 障害の再認定制度が導入されましたのは平成十四年度からでございますが、これまで、当初、再認定を要しないとされ、その後、必要性から区市町村が審査を行った実績はございません。

〇吉田委員
 平成十四年から今まで実績なしということなんですが、ここでお伺いしたいんですけれども、先ほど伺った手帳取得に伴っていろいろなサービスを受けられるわけでありますけれども、そのサービスを手帳取得者が受けるに際して、区市町村の担当窓口に手帳の取得者の方が出向くことはどの程度あるんでしょうか。

〇芦田障害者施策推進部長
 身体障害者の方が申請や届け出などに際しまして、必要に応じて区市町村の障害福祉主管課の窓口に行くということはございますが、利便性の向上を図るために郵送や口座振り込みなど利用することも多く、定期的に窓口に行かなければならないというようなものはほとんどないと思われます。

〇吉田委員
 それをちょっと確認して、つまり、当初、再認定の必要がないというふうにみなされた場合には、区市町村が必要性を認めれば再認定という手続に入るわけですが、その必要性を区市町村が確認、把握するチャンスがないということですよね。そういうことだと全部郵送とかで済ませちゃって、あるいは振り込みで済ませちゃって、実際にその方を窓口でごらんになることがないわけです。これは、つまり、この再認定の制度が機能していないんじゃないかという問題意識を私は持つわけであります。
 ここで改めてお聞きをしたいんですが、厳正な手続と冒頭おっしゃいましたけれども、札幌市の事件のように完全に確信犯でというか、悪意を持ってというか、指定医が虚偽の診断書を書いたという場合には、不正の取得というのを防ぎようがないのではないかと思うんですが、指定医が虚偽の診断書を確固たる意思を持ってというか、書いた場合には、手帳の不正の取得を防ぐことができるのか、お伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 札幌市の事件を踏まえ、都といたしましては、国に対して事実関係の解明を待って、今後の再発防止に向けた解決策を検討するように要望しているところでございます。

〇吉田委員
 今のご答弁は、要するに防ぐことができないと、こういうことですよね。これは国に要望するだけではなくて、都としても、みずからも何か対応すべきだと私は考えるんです。
 例えば、指定医の作成した診断書が適正なものなのかを確認するために、個々の指定医が作成する診断書の傾向を追跡調査するなどして、札幌のときも見れば、異様な件数を一人の指定医の方がうわっと出してくれたんで、周りの人が、あの人に聞けばどんどん診断書出してくれるよといって、だあっと十億円に上る不正になっていったという経緯があるわけなんですね。だから、そういう異様なことが起きれば、おのずとわかってくるというか、地域ではうわさになっていたわけでしたというふうに報道にあります。
 とにかく、個々の指定医が作成する診断書の傾向を把握する、チェックするというか、指定医の適格性を検討するというか、そういう機会が必要なんじゃないかと思いますが、所見をお伺いします。

〇芦田障害者施策推進部長
 身体障害者手帳の交付に当たりましては、診断書、意見書等を厳正に審査しており、また、適正な診断書、意見書を作成することは 指定医としての責務となっております。
 再認定制度につきまして、区市町村に対して改めて周知をしていくとともに、都として、今後とも国の制度に基づき適正な交付事務を行ってまいります。

〇吉田委員
 国の制度に基づいていますので、いろいろ大変だとは思うんですけれども、少なくともできることはやるというか、都として、指定医の状況について、区市町村と例えば定期的に意見交換や情報収集を行って実情の把握に努める、これぐらいはやるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

〇芦田障害者施策推進部長
 指定医の指定状況につきましては、四半期ごとに区市町村に通知をし、情報の共有を図っているところでございます。今後とも、指定医制度の趣旨や先ほど申し上げました再認定制度について、区市町村への周知に努めてまいります。

〇吉田委員
 区市町村に改めて周知をしていただくことは、ぜひお願いをいたします。
 しかし、それのみならず、区市町村は、そこの指定医さんは、その区内からだけ患者さんというかが来るわけじゃないんですよ。区や市を超えて、あるいは都 を超えていろいろなところから診断書を求めて来られるわけで、広域自治体として、都としても、ちょっと繰り返して恐縮ですが、先ほど申し上げたように、指定医の作成した診断書が適正なものか、悉皆じゃなくてもサンプリングでもいいんですけれども、確認するために、個々の指定医が作成する診断書の傾向、この人は何か四級ばっかり出すなとか、追跡調査するなど指定医の状況を把握すべきじゃないかと。チェックというのがなかなか大変だというのであっても、一方的に通知するだけじゃなくて、区市町村は現場だからわかっているということが多いと思うんです。区市町村と定期的に意見交換や情報収集の機会を、ぜひちょっと積極的に今後設けていただいて、実情の把握、これ、だって十億円とか不正が起きている自治体があったわけですから、とにかく努めていただきたいなとご要望をいたします。

 きょう、生活保護と、それから手帳の問題とご質問申し上げましたが、都民の大切な予算で行われる福祉保健局のさまざまな事業、これは真にお困りになっている方に適切に行われるように、本当にしっかりと取り組んでいただくように改めて要望を申し上げまして、また、ご激励申し上げて、私からの質問を終わります。