厚生委員会 (生活保護について)

平成22(2010)年3月17日

厚生委員会

〇吉田委員 皆さん、長時間の質疑、お疲れさまでございます。各委員の質疑を拝聴しまして、私も大変勉強させていただいているところでございます。
 私からの質問に入りますけれども、きょうの質疑の準備をしております間に、昨日、ある新聞の報道が目に飛び込んできました。架空名義で生活保護受給詐欺容疑と、架空の名義で生活保護を不正受給したとして、新宿署は十四日、新宿区の暴力団組員、某を詐欺などの疑いで逮捕したと。同署によると、暴力団組員による架空名義を使った不正受給の摘発は全国で初めてという、あってはならないことが起きたわけでありますけれども、まず、生活保護についてお伺いをしてまいります。
 このところの景気の悪化によりまして、生活保護を受ける方が急増し、都内の生活保護受給者も直近の数字で二十三万人を超え、さらに増加傾向が続いているとお聞きします。確かに一昨年秋以降の景気の低迷により失業者が増加し、派遣切りの問題など、社会保障をめぐる制度全体が大きく揺らいでおります。この中、国では、第二のセーフティーネットの拡充などの対策はとられてきており、また、都でも取り組んでおられますが、年末年始のいわゆる公設派遣村の状況を見ても、まだまだ改善すべき点が見られ、国においても住宅手当の見直しなどが行われており、しかしながら、生活保護を必要とする方はふえてきていると、こういう現状でございます。
 そこでまず、最近の生活保護の動向、及びその特徴についてお伺いをいたします。

〇永田生活福祉部長 まず、最近の生活保護の動向でございますけれども、平成二十一年十二月の生活保護の人員は二十三万六千百二十一人、保護率は一八・二パーミル、保護世帯数は十七万九千七百九十四世帯となっております。平成二十年十二月と比較した場合には、保護人員は二万六千四百九十四人、一二・六%の増加となっておりまして、保護世帯については二万百十六世帯、同じく一二・六%の増加となってございます。
 次に、その特徴でございますけれども、生活保護の世帯類型別の増加状況においては、高齢者世帯が九・一%、母子世帯が八・七%、障害傷病者世帯が九・一%の伸びを示しているのに対しまして、その他の世帯では四一・三%と大幅な増加を示しているという特徴がございます。

〇吉田委員 ありがとうございます。いろいろと各類型別というか、伸びているけれども、その他世帯の急増が目立つということでありまして、多分これは、多くの方は、失業されて、なかなか就職が決まらず生活保護を申請された方だと、このようには理解するわけですが、先日、知事のご発言にもありましたが、中には仕事をえり好みして、働けるのに働こうとせず、保護費を受けている人も含まれているとの指摘もあります。
 こういう働ける状況にあるならば、まず働いていただくことが大事であるわけでございますが、就労に向けて都はどのように支援をしているのか、いくのか、お伺いをいたします。

〇永田生活福祉部長 生活保護は、働ける能力のある方には働いていただくことが大前提でございまして、被保護者の状況に応じまして、担当のケースワーカーが就労指導をしてございます。
 また、区市では、稼働能力がある被保護者の就労自立を支援するための、個人個人に合わせた就労支援プログラムを策定いたしまして、各福祉事務所に配置されました就労支援員がハローワーク等と密接に連携をしながら適切に対応してございます。

〇吉田委員 今ご答弁あったように、働ける能力のある方にきちんと働いていただくと、就労自立を促すためには、今までのいろいろのお取り組みもあるわけですが、例えば失業保険なんかのときも、私も一回、会社をやめて選挙に出る前に失業保険をもらったことがあるんですが、半年とか一年とか、最初は期限つきで保護をして、期間が経過した時点で状況を確認して、保護の継続について、また引き続き必要だなとか、見直すとか、働ける方については思い切ったインセンティブ、ディスインセンティブですね、思い切った改革が必要なのではないかと、このように考えるわけであります。これが現行制度上は難しいことはわかりますが、これ、ぜひちょっと、なかなか難しいんですけれども、考えていただきたいんですが、こうした経済状況が厳しい中にあっても、やっぱり引き続き強力に就労自立を促していただくべきでありますが、この方策についてまたお伺いいたします。

〇永田生活福祉部長 まず、有期限ではどうかというお話でございましたけれども、生活保護制度では、あらかじめ生活保護の受給期間を定めて開始決定をするというようなことはできないということになってございます。
 また、生活保護の廃止に当たりましても、収入状況や将来の見通しを確認いたしまして、保護の要否を判定の上、行うものとされております。したがいまして、現行制度では困難というふうに考えてございます。
 また、生活保護の被保護世帯に対しまして、一刻も早く就労自立できるよう的確なケースワークを行うためには、被保護世帯数に応じたケースワーカーの配置が必要でございます。残念ながら、現時点においては十分とはいえない状況にございますけれども、都といたしましては、各区市に対し必要な人員の配置を指導いたしまして、来年度もそれぞれの区市において増員が図られる予定と聞いてございます。
 これに加えまして、先日ご可決いただきました緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用いたしました就労支援員の増員につきましても、積極的に働きかけて、就労自立に向けた支援を一層強化してまいります。

〇吉田委員 よくわかります。先ほど誤解があるといけないんですけど、失業手当をもらっているときに立候補準備していたわけじゃなくて、その前のある時期に、そういう時期があったというだけですから、誤解のないようにお願いします。
 生活保護は、真に困窮している方に適用するものでありますが、一方では、申し上げているように、就労できる方は就労の義務を果たしていただくことが前提であるわけです。そのためには、適正な生活保護の実施に向けて、ケースワーカーや就労支援員の確保など、必要な人員の配置、こういうことについて私からも改めて都としても積極的に市区に働きかけていただいて、就労自立については支援を強力に進めていっていただきたいとご要望申し上げます。
 一方、冒頭に申し上げたとおり、新聞紙上もにぎわすような不正受給が全国で後を絶たないというのが実情でございます。
 そこで、平成二十年度における生活保護の不正受給の件数、金額及び五年前の平成十五年度と比べて、その伸びはどうなっているのか、お伺いをいたします。

〇永田生活福祉部長 平成二十年度の都内における不正受給の件数は八百九十件、その金額は合計で約十一億三千九百万円となってございます。
 また、平成十五年度との比較でございますけれども、十五年度においては、不正受給の件数は四百五十一件、その金額は合計で約五億六千八百万円となっておりまして、件数で九七・三%、そして金額では一〇〇・五%の増となってございます。

〇吉田委員 要するに倍と、倍増しているということで、件数、金額とも非常に高い伸びを示しているわけです。もちろん経済的に状況が悪くて生活保護を受ける方がふえるというのはわかるんですが、不正受給が倍増しているというのは、ちょっと問題が違うというか−−この間、保護者の数がふえて保護費の支給額が急増しているということとの、じゃ、割り返して、総支給額に対する不正受給の割合、そして実際に返還された金額についてお伺いします。

〇永田生活福祉部長 平成二十年度の都内の生活保護費は、国庫負担金の対象額をベースといたしますと、約三千九百八十二億八千七百万円となっておりまして、不正受給金額の割合は〇・三%となっております。
 また、返済金額は約七千五百万円で、不正受給金額に対する返還割合は六・六%となってございます。

〇吉田委員 ちょっと質問も難しかったんですが、これ、不正受給は〇・三%ぐらい起きていて、返済金額が六・六%しか、不正に払われたものが返ってきていないと。いうまでもなく、生活保護費は日々まじめに働いている都民、国民の貴重な税金から賄われているものであります。本来、最後のセーフティーネットとして真に必要な方に、困窮されている方に支給されるものでありまして、不正受給額がこんなに多額になっていると改めて聞きまして驚きであります。
 それでは、この不正受給、どのような内容の事例が多いのか、また、特に悪質な事例というのはどういうものがあるのか、お伺いいたします。

〇永田生活福祉部長 生活保護は、厚生労働大臣の定める基準、これは保護基準と申しますけれども、これによって最低生活費を計算いたしまして、これとその方の収入とを比較して、その方の収入だけでは最低生活費に満たないときに初めて行われるものでございます。開始時に預貯金等の資産を隠して生活保護を受給したり、給料や年金などの収入を申告せずに過大に保護費を受給する事例などが不正受給に当たります。
 また、悪質なものといたしましては、居宅ケースで転宅費用として支給した敷金等の使い込みや、住所不定のケースで複数の福祉事務所で二重に保護を受けている事例などがございます。これらのケースは、住民税の課税調査、あるいは関係機関への事実関係の調査によって判明することが多くございます。

〇吉田委員 ありがとうございます。複数の自治体で二重にもらうとか、いろいろとんでもないわけですが、このような不正行為は、本当に生活保護制度の信頼感を損なうことはもちろん、都民の税金を必要のない人に支給しているわけでありまして、断じて許してはいけないわけであります。
 こういうことを、不正受給というのを都として防止し、あるいはだまし取られてしまったものを徴収する方策について、都は区市に対してどのような指導をしているのか、お伺いします。

〇永田生活福祉部長 都では、毎年一回でございますけれども、都内のすべての福祉事務所に対しまして、生活保護行政が適正適切に執行されているかどうかなどを見る事務監査を行ってございます。不正受給の防止策の徹底も、この事務監査の重点項目の一つでございまして、開始時の資産調査や毎年の課税調査の徹底など、組織的な対応を求めております。
 また、不正受給額の徴収につきましても、一括の返還、返済が難しい場合にあっても、長期的な返済計画を立てて分割納付を求めたり、生活保護費の支給日に徴収するなど、着実な返済が行えるよう求めております。

〇吉田委員 ご答弁いただいたとおり、都として区市を指導されていることはよくわかりましたが、にもかかわらず、実際問題として、年々、不正受給額が増加して、返還率が六・六というのは一割にも満たないという現状であります。生活保護の支給に関する直接的な責任を持つのは区市であることはもちろんでありますが、事務監査権限を持つ東京都も、これまで以上に積極的にこういう状況では不正受給の撲滅に取り組んでいただきたいと思います。改めて都のご決意を伺います。

〇永田生活福祉部長 生活保護制度は、国が生活に困窮するすべての国民に対して、その困窮の程度に応じ必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する最後のセーフティネットとして非常に重要な制度でございます。制度の運用に当たりましては、適正な執行が求められますが、不正受給の増加は、この制度の根幹を揺るがし、国民への信頼性を損なうものでございます。都といたしましても、引き続き区市に対し、不正受給の防止や不正受給額の徴収について指導してまいります。
 また、特に悪質なケースにつきましては、警察への告発など、厳正な対応を求めてまいります。

〇吉田委員 ありがとうございます。これも再度いいますが、生活保護の適用は真に生活に困窮している方へ支給すべきものでありまして、制度の悪用は絶対に許せない。こういう悪質なケースの再発を防止するためには、現行制度でなかなかお取り組みのご苦労の中で限界があろうかと。
 私は、各党のいろいろな政策もちょっと勉強をさせていただきましたが、個人ごとの社会保障番号制度の導入ということが、これは本当にどの方がどういうこと、行政のサービスを受けているかということをきちんと把握できる、こういう制度の導入が必要だと私は思います。これは基本的には国レベルな問題でございますので、私としても、こういう制度の導入実現に向けて国に働きかけてまいりますが、都としても、現場レベルの課題を整理していただいて、国に働きかけていただきたいと、このように要望いたします。
 一方、これらの不正受給や、安易に生活保護を受けようとする方がふえてしまっている。こういう背景には、私は生活保護の基準そのものの問題があると、このように認識します。
 そこで、ちょっとこういう問題意識で、生活保護の基準についてお伺いをしたいと思います。
 まず、都区内の高齢単身者の保護基準についてお伺いします。

〇永田生活福祉部長 七十五歳の高齢単身者世帯の場合でございますけれども、生活扶助費が七万七千六十円、これに住宅扶助といたしまして五万三千七百円以内の実額でございますので、合計で十三万七百六十円が上限というふうになってございます。

〇吉田委員 十三万七百六十円と。高齢者の基準については、平成十八年度に老齢加算が廃止されるなどの見直しはありましたが、それでも、この老齢基礎年金ですね、老齢基礎年金の受給額、これは月額六万六千円でございます。これと比較してもまだ高いわけでありまして、これは、要するにまじめに年金を払っている方よりも生活保護を受けている方の方が高い金額を支給されると。そもそも、ここにギャップがあるわけです。
 生活保護費の原資は、先ほど来申し上げているとおり、一〇〇%税金であります。こういうことを考えますと、納税者でもある一般勤労者、この方の所得ということも見る必要があると思うんです。都内の勤労者世帯の実収入の動向を見ますと、平成五年をピークとして、このころを一〇〇とすると、平成二十年には約一五%近く減収していると、こういうデータであります。平成五年を一〇〇とすると、平成二十年には一般勤労者が八五しかもらっていない。
 そこで、同様に、平成五年と平成二十年を比べた場合の、生活保護の保護基準の推移はどうなっているのか、お伺いします。

〇永田生活福祉部長 夫が三十三歳、妻が二十九歳、子四歳の標準三世帯の例にとってご説明をさせていただきます。
 生活扶助基準額が平成五年度では十五万三千二百六十五円でございます。一方、平成二十年度では十六万二千百七十円となっておりまして、この間五・八%の増となってございます。
 基準の改定状況を見ますと、平成五年度から平成十二年度改正までの間に七・〇%の増となりまして、その後、平成十五年度改定ではマイナスの〇・九%、平成十六年度改定ではマイナスの〇・二%となってございまして、また、平成十三年度、十四年度及び平成十七年度以降の各年度は、前年度と据え置きとなってございます。

〇吉田委員 これは五・八%増と、上がって下がってですね。この間の消費者物価指数の動きを見ますと、これもまた、一たん上昇して、その後デフレ傾向となって下がって、その結果、平成五年と平成二十年の水準はほぼ同じになってます。こうした中、先ほど老齢基礎年金の話をしましたが、老齢基礎年金も五年から二十年にかけて七・四%の伸びになっていて、一定の伸びはあるんですが、それでも生活保護に比べて低いと。そして、給与の方は一五%下がっていると。これは、つまり結果として、まじめに働いている方の経済の動向と福祉の改定とが異なった傾向になっているということでございます。
 どちらが高いとか、どちらが低いとか、どの水準がいいとか、こっちが高過ぎるとか低いとか、そういう問題ではなく、ギャップがあってまじめに働いている方が、例えばシングルマザーの方が必死に毎日ずっと働いても十八万円しかもらえないのに、その方が生活保護を受けたら二十五万円もらえたという方がいらっしゃいまして、じゃ、また働くかと、給与が十八万円に下がっちゃうんだけれどもという状況で、本当にまじめに働くという決断が、お金がなくなっちゃうのにできるかということなんですね。
 要するに、経済情勢が厳しい中、いろいろの努力も、総合的な努力が必要ですけれども、やっぱりまじめに働く人も納得がいくような適正な水準というのはどういうものなのか。これは都として国にまじめに検討してくれと、じゃないと働く人がいなくなって、支えられる人にどんどんなっていっちゃうよということについて、構造的な問題について、都として国に進言していただくべきではないかと思いますが、所見をお伺いします。

〇永田生活福祉部長 生活保護基準は、ナショナルミニマム実現の観点から国がその責任に基づき定めるものでございます。都といたしましては、生活扶助基準の見直しに当たりまして、被保護者が住みなれた地域での生活を継続できるよう、大都市の生活実態を踏まえたものとするよう国に提案要求をしているところでございます。
 現在、国はナショナルミニマム研究会を設置いたしまして、最低生活費の分析など広範な検討を重ねていると聞いてございます。生活保護基準につきましては、都民の生活実態とのバランスも当然考慮しなければならないものと考えておりまして、国の動向を注視しつつ適切に対応してまいることを考えております。

〇吉田委員 なかなか難しい質問をしたんですが、ご答弁ありがとうございます。生活保護の基準については、国全体のナショナルミニマムの中でどのように位置づけられるかという本当に難しい課題でありますが、一方、一般都民、勤労者の心情と乖離した基準や内容でありますと制度そのものへの信頼感が失われて、また、安易に生活保護に流れるというモラルハザードも起きてしまう。そして、社会保障制度そのものが崩れてしまうということになりかねません。
 都の生活保護受給者が全国の一割以上を占めているという重さもあることを踏まえて、引き続き国に対して適切な進言をしていただきたい旨、改めて要望いたしまして、まず、この項についての質問を終わります。