厚生委員会 (ホームレス対策について)

平成22(2010)年3月5日

厚生委員会

〇吉田委員
 よろしくお願いします。
 私からは、ホームレス対策についてお伺いをいたしてまいります。
 今般、緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の設置目的に、求職中の貧困、困窮者等に対する生活、就労、住宅等に関する支援を加えることが提案されているわけであります。
 この基金は、国の交付金により都道府県に造成されたもので、これに伴い、これまでの国庫補助事業として実施してきた四事業、すなわち、住宅手当緊急特別措置事業、生活保護受給者等に対する就労支援、ホームレス対策事業、生活福祉資金貸付事業における相談体制充実、この四つが基金で実施されることになるわけであります。
 各委員からいろいろご質疑ありましたが、この中のホームレス対策につきましては、昨年十月にホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第二次)が出されまして、今後、五年間の計画が示されたところであります。
 そこで、まずホームレス対策、ホームレスの現状についてですが、国が毎年行う路上生活者概数調査によれば、二十三区内のホームレスの数は、平成十一年の五千八百人をピークに減少傾向にあり、昨年夏に二千五百人となっています。
 自立支援システムなど、都区の対策事業の効果も大きいといわれているわけでありますが、まずこの自立支援システムというものがどのようなものか、確認のためお伺いをいたします。

〇庄司生活支援担当部長
 都は、特別区と共同で二十三区内に緊急一時保護センターと自立支援センターを設置しております。緊急一時保護センターでは心身の健康回復と以後の処遇方針を明らかにし、自立支援センターでは就労による自立を支援しております。
 このように、各個人の能力に応じた一貫した処遇システムを構築し、ホームレスの着実な社会復帰を支援しております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。そうしましたら、この自立支援センターの退所者の就労自立の状況についてお伺いをいたします。

〇庄司生活支援担当部長
 平成十二年度から平成二十年度末までの累計では、自立支援センターを退所した者九千三百九十七人のうち、就職した者は八千百七十三人、率にして八四%。そして、就労によって自立した者は四千七百七十六人、率にして五一%となっております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。退所者のうち、半分の方が就労して自立と。つまり、住み込みとか、あるいは自分でアパートを借りたりして、仕事をして自立をすることができている。これは評価できることであります。
 ただ、残り半分近くの方が自立できていないということで、これは残念なわけですが、この自立できなかった退所者の方が再び利用者として入所してくるケースというのはどれぐらいあるんでしょうか、伺います。

〇庄司生活支援担当部長
 平成二十一年四月から一月末までの間の緊急一時保護センター入所者のうち、約二五%が再利用者となっております。
 なお、再利用の条件といたしましては、直近の利用承諾解除日から六カ月以上経過していること。また、通算で三回を超えないことを条件として定めております。

〇吉田委員
 一定数のリピーターが存在するということで、これはいろいろと対策のための重要な数字になってくるわけですが、次に、まず経費面の検証というのをちょっとさせていただきたいと思います。
 このホームレス対策の経費、これが幾ら、どのくらいかかっているのか。そして、これを自立支援システムの施設に入所している利用者一人当たりということに割り返して考えると幾らになるのかお伺いをします。

〇庄司生活支援担当部長
 平成二十年度決算ベースで、緊急一時保護センター及び自立支援センターの運営費、整備費、巡回相談事業費等で、総額約二十八億円となっております。
 自立支援システムの施設運営費を入所者一人当たりに割り返しますと、平成二十年度決算ベースで、緊急一時保護センターにおいては約二十八万円、自立支援センターにつきましては約六十万円となります。

〇吉田委員
 これは総額二十八億円ですね。国庫補助金で国が負担した分が約五・五億円、都と区の負担がそれぞれ十一億円ぐらい。
 これ、施設入所者一人当たりに割り返した金額を過去三年の推移と比較するとどうなるんでしょうか。

〇庄司生活支援担当部長
 緊急一時保護センターでは、決算ベースで、平成十八年度で約三十一万円、十九年度で約二十九万円、二十年度で約二十八万円となっております。
 自立支援センターでは、決算ベースで、平成十八年度で約七十五万円、十九年度で約七十八万円、二十年度で約六十万円となっております。

〇吉田委員
 これ、年によって多少の動きがありますけれども、一人の方が緊急一時保護センターと自立支援センター双方を利用した場合、直近の平成二十年度決算の数字では、係る経費が合わせて約八十八万円というご答弁でありました。
 仮に生活保護をこういう方がお受けになるとなりますと、単身者の場合、月額約十三万五千円−−これは家賃、住宅扶助ですか、これを入れて十三万五千円で、年額で百六十三万円程度ということになるわけです。
 この生活保護に要する経費と比較しても、この八十八万円、行政が負担して、自立をしていただけるということで、大変効果のある事業だと。
 そしてまた、さらに自立をしたご本人の、やっぱり誇りと自信と、こういうものにもつながると思いますので、この施策は評価できるパフォーマンスを示しているのではないか、このように考えるわけであります。
 この自立支援システム、このルートに乗ってこない方への誘導ということにちょっと立ち戻りますが、これはどういうふうにやっているのかお伺いします。

〇庄司生活支援担当部長
 自立支援システムの利用に当たりましては、本人が二十三区の福祉事務所に相談に行き、申し込みをしていただくことになります。
 なお、平成十八年度から巡回相談事業を開始いたしまして、相談員が公園や河川等に直接出向きまして、ホームレス個々人に面接相談を実施することによりまして、健康面や生活面での状況を個票に記載することで状況を把握しております。
 そして、就労自立に意欲のある方に対しましては、緊急一時保護センター及び自立支援センターの紹介、利用のあっせんなどを行い、本事業の周知に努めております。

〇吉田委員
 誘導のやり方というのはわかったわけですが、ちょっと今、切り口というか、質問を変えまして、数日前の新聞で、ある研究グループが池袋で調査をしたところ、百六十四人の路上生活者のうち、三四%が知的障害の疑いがある、こういう記事がありました。この報道についてどのようにお考えになるか、見解を伺います。

〇庄司生活支援担当部長
 平成十九年一月に国が実施いたしましたホームレスの実態に関する全国調査報告書によりますと、本人への聞き取り調査で、身体、知的、精神の手帳を持っている、または過去に持ったことがある人は五・四%、障害はないので手帳を持っていないと答えた方が九四・六%となっております。
 今回報道されました数字につきましては、詳細は承知しておりませんが、限られた地域、人数によるもので、国の調査と少々開きがあると考えております。

〇吉田委員
 母数にかなり差があるというか、国では大変大人数について調査しているわけで、そちらの方が全体の様相は示していると思うんですけれども、先ほどご答弁いただいた巡回相談において、知的障害や、あるいは精神障害、こういうものをお持ちの路上生活者について、きちんと把握して適切に対処しているのか、この点、現在どのような対処を行っているのか伺います。

〇庄司生活支援担当部長
 巡回相談において接触する中で、知的障害や精神障害の可能性が見込まれる方につきましては、福祉事務所への相談を勧めたり、必要に応じまして同行することにより、福祉事務所につなげております。

〇吉田委員
 障害があり就労できないという方については、ホームレスの方についても、福祉事務所なり、しかるべき機関でその人にふさわしい支援をきちんと行わなければいけないわけで、先ほど触れた記事のような、これは問題提起でもありますので、若干そのパーセンテージに差があったとしても、こういう現実があるんだという認識が一つ提起されているわけでありまして、改めてこの巡回などにおける、こういう方々、より密接にというか接して、そういう可能性があるかどうか、きちんと取り組みをするように徹底をしていただきたいと改めて思います。
 しかし、働ける方についてはしっかりと働いていただかないといけないわけであります。この国のさまざまなインフラも福祉も、国民が助け合い、支え合うことで維持されていることを片時も忘れてはならないわけであります。この現下の厳しい経済状況の中で、一生懸命に働いている都民、国民の理解も得られなくなってしまうということになってはいけない。
 また、公園、道路など、施設の適正な利用ということを確保することも、これは大変重要で、当然の要請であるわけです。このような各施策の目的と、その関係性とをよく認識して事業を実施する、こういう姿勢でいただかなければならないわけです。
 具体的に動きをするのはそれぞれの現場かもしれませんけれども、庁内の担当部局同士も、実効性のある連携をしていただかなければなりません。
 さまざまな観点から見て、ホームレス対策、これを有効に進めていくためには、福祉保健局だけではなく、各局との連携、これをやって取り組んでいただかなければいけないわけですが、この各局との連携ということについてご見解を伺います。

〇庄司生活支援担当部長
 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法には、福祉施策のみならず、雇用、就業、居住、保健医療など、各分野での施策の必要性が掲げられております。
 都庁内では、平成十二年十二月に路上生活者対策連絡会議が設置されまして、第一次及び第二次の実施計画策定に当たってもこの会議を活用したところでございます。
 会議以外でも、産業労働局、都市整備局及び建設局とは日常的に連絡を密にして取り組みを進めております。

〇吉田委員
 いろいろ質疑をしてまいりました。この都区共同事業のホームレスの自立支援システムは、これは大変意義のある取り組みであると。
 しかし、さらにトータルな意味での事業の効率性、成果の向上、こういうことを図っていただかなければなりません。就労自立率が五一%というお話でありましたが、これを本当に少しでも向上させていただくよう、あるいは、現在の予算額で、制約がある予算の中で、今の事業額で、より規模を大きくというか、実施できるように、各局連携のもとで、また、都や区や法人ほか関係各方面の皆様に頑張っていただきたいわけであります。
 例えば、いろいろ報道を見たり調べたりしていましても、実はいろいろなところで仕事というのはあるわけであります。例えば、地方の農家などでは本当に人手不足で悩んでおられますし、あるいは、東京都でも、どういうふうにつないだらいいかわかりませんが、多摩の奥の方では森林が荒れていて、人手がないから荒れ放題というような状況もあるわけであります。
 今後、就労先として、人手不足に悩む農林業にもマッチングでつないでいくような、そんなことも、なかなか難しいかもしれませんが、ぜひ考えていただきたいわけであります。
 最後に、ホームレス対策で目指しているこの就労自立に向けて、少しでもこの自立率というのを上げて、一人でも多くの方に自立をしていただくために、今後どういう取り組みを行っていくのかお伺いをいたします。

〇庄司生活支援担当部長 都はこれまでも、ホームレスの就労自立に向けて就業機会の確保に取り組んでおります。
 昨年十月に公表いたしましたホームレスの自立支援等に関する第二次実施計画におきましても、求人の確保や職業能力の開発などを盛り込んでおります。
 今後とも、ご提案の趣旨等を参考に、ホームレスの就労自立に向け、職域拡大に努めるとともに、技能講習の拡大など、職業能力の開発を図り、一人一人の特性に応じた就労支援をきめ細かく実施してまいります。