各会計決算特別委員会 第二分科会 (学力の向上について)

平成20(2008)年10月29日

各会計決算特別委員会

〇吉田委員
 皆様お疲れさまでございます。ただいま各委員の皆様から大変有意義な質疑があったところでございますけれども、私からは、学力の向上のための施策という観点から少しご質問をさせていただきたいと思います。
 小中学校におきまして編成される教育課程の基準である学習指導要領は、これまでおおむね十年に一度改訂をされてまいりましたが、特に、昭和五十二年改訂、五十五年度から実施されていた、いわゆるゆとり教育の導入以降、授業の内容も時間数も改訂のたびに減らされていき、現行の学習指導要領は、授業内容は昭和五十四年以前の約半分、時間数も極めて少ない、こういうものであります。
 私は、幸運なことに昭和五十四年度に区立の小学校を卒業いたしまして、その後は私立に進みましたものですから、成長期の、最も柔軟で吸収力があって、乾いたスポンジが水を吸い取るように、今同じことをやれといわれたら到底不可能な膨大な量と内容のいろいろな物事を若い心身に刻み込んでいける、育ち盛り、伸び盛りの大切なかけがえのない時期に、それにふさわしくたくさんのことを教わることができました。
 ゆとり教育などというものによって学ぶ機会を奪われずに済んだことを、本当に運がよかった、ありがたかったと感謝をしておりまして、逆に、その大切な時期を、ゆとり教育の名のもとに、私どものころの半分の内容しか学ぶ機会を与えられなかった世代の皆さんは、本人たちは比較できないので気づいていないかもしれませんけれども、本当にかわいそうだと。そして、そういう世代をつくり出してしまったことは本当に国家の損失であったと、残念に思っている次第であります。
 現在、基礎学力の低い大学生あるいは社会人、企業に入ってから企業がびっくりして、学校のように新人に勉強を教えなきゃいけないと、こういう事象、存在に象徴されますように、我が国の子どもの学力が大変低下をしていると懸念されている、この指摘は、実際、PISAの調査など次々に発表される国際的な学力調査において、我が国の児童生徒の順位が低下していることなどを見ても、明らかな事実であります。
 このような客観的な事実、現状を把握することは、適切な施策を打ち出すために不可欠な判断材料、情報として必要でありまして、その意味で、全国的な学力・学習状況調査は当然に必要であります。
 平成十六、十七年度、文部科学省委嘱の義務教育に関する意識調査、この報告書を見ましても、関係者、保護者、学校評議員、教育長、首長などは、全国学力テストを実施するということに賛否をとると、賛成の方の割合が六割を超えているということで、今、この必要性について国民的に理解が深まっていると、このように認識をしております。
 このようなさまざまな調査をきちんと行って把握をして、都の児童生徒の学力の実態を把握して、学力の向上に取り組んでいただかなければいけないと思っているわけですが、そこで決算説明書の九三ページにございます東京都教育委員会の学力向上のための施策について伺います。
 都の教育委員会は、全国に先駆けて、児童生徒の学力向上を目指して平成十五年度から独自の学力調査を実施しています。平成十九年度調査につきましては、平成二十年一月に実施をし、六月に結果について公表したと伺っております。十九年度は五回目となるわけでございますが、この調査結果から都の児童生徒の学力の実態をどのように把握をしているのか伺います。

〇高野指導部長
 平成十九年度までの都が実施した学力調査の結果からは、児童生徒の基礎的、基本的な事項の定着状況につきましては、全体的におおむね良好であること、問題解決等の能力につきましては、長い文章を読んで内容を把握することや情報を整理して判断することなどに課題がございまして、活用や応用についての指導が必要であることなどがわかりました。
 また、あわせて実施いたしました学習に関する意識調査、この結果から見ると、五年前と比べまして、学習がわかる、どちらかといえばわかると答えている生徒がふえていることも明らかとなりました。

〇吉田委員
 ありがとうございます。これらの今おっしゃった調査結果は、区市町村の教育委員会はもちろん、各小中学校に届けられていると思いますけれども、それでは学校はどのように活用しているのかお伺いをいたします。

〇高野指導部長
 東京都教育委員会は、都が実施した学力調査の結果につきまして、各教科の学校別正答率あるいは意識調査の個別の回答などにつきまして、データを区市町村教育委員会に送付するとともに、授業改善のポイントを記しました児童生徒の学力向上を図るための調査報告書を作成いたしまして、区市町村教育委員会や各学校に送付しているところでございます。各学校では、こうした調査結果あるいは児童生徒の学習状況をもとに、授業改善推進プランを作成いたしまして、授業改善に取り組んでいるところでございます。

〇吉田委員
 わかりました。
 ところで、学力の定着というためには基本的な生活習慣の確立が重要であると、このように指摘をされていると思います。
 都の学力調査では、学習に関する意識調査もあわせて実施をし、生活や行動に関する設問もあるというふうに伺っております。この学力の定着状況との相関ということについては、都はどのように認識をしておられるんでしょうか。

〇高野指導部長
 都の学力調査では、児童生徒の学習に関する意識調査として、学校に行く前に朝食を食べるか、身の回りのことを自分でしようとしているかなど、基本的な生活習慣が身についているか、主体的に考え行動しているかを聞く設問がございます。
 朝食につきましては、必ず食べる、大抵食べていると回答している児童生徒の平均正答率は、食べない、食べないことが多いと回答している児童生徒の平均正答率に比べまして一六・一%高くなってございます。また、身の回りのことを自分でしようとしているかについては、している、大抵していると回答している児童生徒の平均正答率は、していない、しないことが多いと回答している児童生徒の平均正答率に比べまして八・一%高くなってございます。
 こうしたことから、基本的な生活習慣と平均正答率との相関はあるといえると考えております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。都として、基本的な生活習慣と、学力といっていいでしょうか、相関はあるんだというふうにご認識であるということでご答弁がありましたが、この相関があるんだという調査結果を家庭に理解をしてもらわないと意味がないと思うわけであります。
 昔と違ってというか、今は、子どもが自分で朝ご飯を用意して、それから出てくるということではなく、親にちゃんとつくっていただいて、あるいは親がお金を与えてコンビニエンスストアで買ってきなさいみたいな、いろんなことが起きてしまっているんだろうと思うんですが、家庭が、あるいは親が、基本的生活習慣をきちんとしないと学力というものがきちんと定着しないんだという認識を、そういうことを知っていただく、これが大事だと思うんですが、家庭への周知ということについてはどのようにしていらっしゃるのか伺います。

〇高野指導部長
 東京都教育委員会では、学力調査の結果が記入されております個人票を区市町村教育委員会を通しまして各学校の児童生徒に返却してございます。各学校では、個人票を返却する際に、児童生徒に日ごろの学習への取り組み方や日常生活を振り返らせております。さらに、この個人票をもとに児童生徒や保護者との面談等を行いまして、家庭での学習や生活の改善を図っているところでございます。

〇吉田委員
 ありがとうございます。今ご答弁をいただきました、個人票をもとに児童生徒や保護者との面談等を行い、家庭での改善を図っていらっしゃるということでありますけれども、児童生徒は先生が一生懸命面談等をしている。ただ、保護者にきちんと面談等を行って、親、家庭、こういうところへの働きかけをちゃんとやっているかどうか、ここはよくよくお聞きをしていますと、区市町村によって随分とばらつきがあるというか、きちんとすることを徹底的にやっている区市町村と、どうもそこまでは徹底をしていないというところがあると、このような現実ではないかというふうに認識をしております。
 保護者への十分な情報提供、これが本当に重要でありまして、個人票をせっかくこのように準備をして用意しても、児童生徒だけに働きかけようとしているしている状況ですと、その児童生徒によっては、簡単にいえば紙飛行機にして飛ばしてしまったり、学校に積んでおいたり、何が起きるかわからないというか、確実に家庭に届かなかったり、あるいはその重要性を保護者が認識できなかったりと、こういうことでは、残念ながら、せっかくの都の取り組みですが、効果が上がらないわけであります。保護者との面談等についてばらつきがある、学校ごとにもばらつきがあるというような状況が続きますと、都の教育委員会のねらいとする児童生徒の学習状況の改善につながらない、これが行き渡らない、こういう可能性があるわけであります。
 この学力の向上については、基本的な生活習慣の確立が重要であることを、本当にあまねくというか、保護者に理解をしていただいて、家庭の協力を得ていく、そういうことに都の教育委員会としてさらに一層お取り組みをいただく必要があるんじゃないかな、このように考えますが、いかがでしょうか。

〇高野指導部長
 児童生徒の学力向上と基本的な生活習慣の確立には関連があることから、このことを保護者に周知することは、委員ご指摘のように重要なことであると考えております。
 保護者への周知につきましては、現在、各学校がその実態に応じまして工夫しているところでございます。今後は、保護者に働きかけ、家庭の協力を得て学力向上を図ることが重要であることを、区市町村教育委員会対象の学力向上調査説明会で指導の徹底を図ってまいります。

〇吉田委員
 大変前向きなご答弁をいただきましてありがとうございます。
 今回の学習指導要領の改訂でございますが、これにおきましては、授業内容も時間数も、脱ゆとりといういい方もされますけれども、少しくふえたというふうに認識をしておりまして、これが二十一年度から二十四年度までの予定が、来年度から前倒しの実施もしていくということで期待が寄せられるところでありますが、この内容とともに、学力の向上につきましては、今質疑をさせていただいたとおり、基本的な生活習慣の確立が大変重要であるということが、学校側あるいは自治体側の努力だけでなくて、家庭が大事だということが調査結果でも明らかだとご答弁いただいております。このことを保護者にぜひ関心を持って深く知っていただくと、そしてご協力をいただくということで、学力向上の施策はより効果が上がるはずでございます。
 繰り返しになりますが、家庭の力が大変重要だということをすべての保護者が十分理解して取り組んでいただけるように、今ご答弁いただきましたとおり、都教育委員会として区市町村の教育委員会とぜひ連携を強めて、学力向上の施策に努めていただきたいと思います。
 質問を終わります。