各会計決算特別委員会 第二分科会 (病院経営、医師の確保対策について)

平成20(2008)年10月20日

各会計決算特別委員会

〇吉田委員
 よろしくお願いします。
 ただいま田代委員からお医者さんの専門のお立場から、重みのある質疑を大変勉強させていただきましたけれども、一般都民の代表として、素人ながら幾つか十九年度決算、聞かせていただきたいと思います。
 東京都保健医療公社への運営費補助金の中で中心を占める地域病院等の運営ということで、今お話のあった医師の確保対策などについてお伺いします。
 都は、これまで平成十六年四月の大久保病院を皮切りに、平成十七年度に多摩老人医療センター、十八年度に荏原病院を保健医療公社に運営移管してきました。この都立病院の保健医療公社への運営移管についてですが、荏原病院においては、大学からの医師引き揚げによって、平成十九年十月以降、産婦人科が医師不足となって、分娩の取り扱いを休止しているということでございます。
 こうした医師不足の状況は、公社病院だけの問題ではもちろんなく、先日も千葉県のある四百床程度の公立病院が病院を休止することになったことが報道されましたように、全国的な問題でございます。
 このような状況を招いた背景には、新人医師が出身大学の医局でなく、自由に研修先の病院が選択できる新臨床研修制度が十六年度からスタートしたことによって研修医の大学離れが進んで、一部の病院から医師の引き揚げが行われたことがあると、そのようにいわれております。また、医師が勤務環境の厳しい病院勤務を避けて、開業医の志向が強まったことも原因の一つであるといわれているわけです。
 こういった医師不足を解消するために、素人的に考えますと、いろいろ医は仁術という思いを持ってこの職についていらっしゃる皆様でありますが、まずは処遇改善を進めていくというのが何より必要なのではないかなと考える次第であるわけです。
 そこでお伺いするんですが、公社病院の医師の給与水準というのが全国的に見てどうなのか。また、十九年度決算ですから、十九年度に給与で改善した点があれば、あわせてお伺いいたします。

〇都留サービス推進部長
 公社病院医師の給与は、都立病院医師の給与レベルと同程度となるように給与水準を定めておりますが、平成十八年度の時点では、都立病院と同様、都道府県レベルで全国水準と比較してみますと、十分な状況にはなっておりません。そのため、十九年度におきましては、宿直手当について改善を図っており、一回につき一万五千百円から三万円に引き上げを行いました。仮に月四回の宿直を行ったと仮定いたしますと、年額でおおよそ七十万円の改善となっております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。私もちょっと聞かせていただいて、全国水準と比較すると大変なんだなということをお聞きして、びっくりいたした次第です。
 宿直手当を一万五千百円から三万円にほぼ倍増させて、年額で約七十万円の増加ということが図られたと。これは一定の改善であったんだなと思います。
 しかし、こういった取り組みを行ってはいただいたわけですが、その結果、医師の確保という目的において、成果がどれだけ上がったのかなということを、これはお聞きしなければいけないと思うんです。公社病院において、こういう給与改善を十九年度に行った結果、医師の確保にどれだけの効果があったのか、お伺いいたします。

〇都留サービス推進部長
 平成十九年度の公社の常勤医師の確保状況を十八年度と比較いたしますと、四月一日現在で、十八年度は二百五十一名で充足率約九三%、十九年度につきましては二百四十九名で約九二%となっており、ほぼ横ばいの状況でございます。医師の確保につきましては、給与改善という点で申し上げますと、取り組みを開始した直後でもございます。効果があらわれるまでにはもう少し時間を要するものと考えております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。せっかく改善したけれども、横ばいで、まだちょっと効果が出ていないということで、早く効果が出てほしいなと思うんですが、一つの見方、考え方としては、引き続きもっと改善に取り組んでいく必要もあるのかなと。これまでの取り組みがまだ足りないのかもしれないということもあろうかと思うんです。
 公社病院の医師給与、これまた二十年度も改善に向けて、取り組んでいくことが当然ではないかなと思うわけであります。特に、小児科や産科、救急に対応する医師など、過酷な勤務を強いられているといわれる診療科におきましては、今後一層、給与や手当を含め、さまざまな改善を図っていただく必要があるのではないかと思います。ぜひ引き続きのお取り組みをお願いいたします。

 さて、OECD諸国における医師数を人口千人当たりの医師数で比較してみましても、フランスやドイツの三・四に対して、日本は二・〇という状況にありまして、非常に低い状況であります。国もようやく重い腰を上げまして、医師の養成数をふやす方針が出されましたが、育成には先ほどもご答弁があったとおり、効果があらわれるにはというか、五年、十年単位の期間を要するということで、効果があらわれるにはまだまだ時間がかかると思われます。
 こうした中で、先ほど田代委員のご質問にもありました東京都として若手医師を育成する東京医師アカデミーの二十年度開校に向けて、十九年度中にさまざまな取り組みを行ったと伺っております。公社病院においても、このプロジェクトに参加して、若手医師の育成を図ることとしていると聞いております。
 そこで、東京医師アカデミーについて、どういう構想で行い、どういう仕組みで実施していくのか。そして、十九年度中に公社病院においても募集をされたと思うんですが、採用状況はどうであったのか、お伺いいたします。

〇都留サービス推進部長
 医師の採用環境が厳しさを増す中で、病院経営本部では、大学医局のみに依存しない質の高い医師の確保、育成を図っていくため、平成二十年四月に東京医師アカデミーを開校いたしました。公社病院におきましても、この東京医師アカデミーに参加し、都立病院と共同して若手医師の計画的な育成、確保に取り組んでおります。
 この制度では、これまで病院ごとに実施してきました専門臨床研修を都立病院、公社病院全体で実施することで、合わせて七千床を超えるスケールメリットを生かした豊富な症例等を活用し、高い臨床能力と専門性を兼ね備えた若手医師を育成するものでございます。
 研修は、総合診療能力と専門臨床能力の向上を図るため、内科、外科、小児科などのコースごとに設定したカリキュラムに基づき、各病院の指導医が一人一人のレジデントの習得度合いに応じたきめ細かい指導を行っていく仕組みといたしております。
 また、平成二十年度の開校に向け、公社病院における初年度の応募は十一名で、十名の採用があったと聞いております。

〇吉田委員
 ありがとうございます。十九年度中、しっかりと都民の大切な税金を活用していただいて、お取り組みをされていた状況がよくわかりました。
 医師の確保というのは、健全な病院運営を進める上での本当に基本的な第一歩でございます。若手の医師の育成、確保に向けたこうした取り組みは、安定的な運営を継続していくために不可欠の取り組みであります。公社病院がこうした取り組みに参加して、都立病院と共同して行っていただいているということは大変意義のあることでありまして、引き続き、東京医師アカデミーを活用して、若手医師の育成に向けた取り組みを充実していっていただきたい、このように思います。
 こうした病院に勤務するお医者さん、地域医療を支える貴重な人材としてとらえていただいて、給与面、そして、教育体制、勤務環境など、総合的に改善を進めていただくことが本当に重要だと考えます。さらなる皆さんのご努力をご要望申し上げて、質問を終わります。