環境・建設委員会 (首都高速品川線の工事契約について)

平成20(2008)年6月20日

環境・建設委員会

〇吉田委員
 昨年の十二月に中央環状新宿線の池袋−新宿間が開通し、首都高全体ではピーク時の渋滞の総延長は約二〇%減少したそうであります。
 私の住む中野区でも、中央道や東北道とのアクセスが便利になりました。さらに今後、新宿線の新宿以南と今回の契約議案の品川線が開通し、中央環状線のリングが完成をすると、首都高の渋滞の解消に向け、大きく前進すると思われます。

 現在、私が住む中野区から羽田空港まで、首都高に乗っていく場合、四号線を使い、一度都心を経由し、湾岸線を通って羽田という経路となります。
 安心して行くには、少なくとも一時間ではちょっと心配で、一時間半は見込まなければなりません。
 一時間半といえば、飛行機に乗れば、沖縄以外であれば、国内大抵のところに着いてしまう、そういう時間であります。

 中央環状線の新宿線と品川線が開通をすれば、新宿−羽田間は約二十分に短縮をされます。このような時間の短縮などにより、年間約一千二百億円という膨大な経済効果がもたらされるとのことです。
 さらに、渋滞が減少し、車の流れがスムーズになることで、NOxは年間で約百トン、CO2は年間で約九万トンが削減され、環境改善にも大きな効果があると聞いております。
 これらの効果を早く発現させるためにも、中央環状線の早期整備が強く望まれます。

 しかし、事業を急ぐ余り、不適切な発注が行われ、手抜き工事や割高な契約が行われるなどして、税金がむだ遣いされることは、都民から見て決して許されることではありません。
 今回の品川線の契約案件二件は、品川線の骨格をなす大規模な工事であり、発注に当たっては適正な契約とコストの縮減への取り組みが特に重要と考えます。

 そのような観点から、数問をご質問いたします。
 まず、シールド工事その二について質問いたします。
 この工事は、昨年の二定に契約案件として提出したところ、仮契約の相手方が、例の昨年六月の防衛施設庁談合事件の影響ということで、指名停止によりまして仮契約が解除となり、再発注を行ったものであります。配布資料によりますと、今回の入札の予定価格は四百九十七億六千二百三十三万五千円、落札価格は四百七十二億五千万円であります。
 一方、前回の入札の予定価格は七〇七億四千六百三十七万五千円、落札価格が四百三十一億五千五百万円と聞いております。今回の予定価格は、前回に比べて著しく下がりました。その理由を伺います。
 一方、落札価格は前回よりも上がったわけでありますが、その理由もあわせてお伺いいたします。

〇山口道路建設部長
 都は、中央環状品川線につきまして、首都高速道路株式会社と共同で事業を進めているところでございます。このシールド工事の再発注に当たっては、さきに契約いたしました首都高速道路株式会社の構造との整合性を図るとともに、工期の短縮とコスト縮減のため、設計の見直しを行ったところでございます。
 この見直しにより、トンネル外径の縮小やセグメントの耐火仕様の見直しなどにより大幅にコストを縮減し、あわせて工期も短縮することができます。その結果、予定価格が下がったことにつながったわけでございます。
 また、落札価格が前回より上がったのは、鋼材を初めとする建設資材の高騰や、工期短縮のための設備投資などと推測することができます。

〇吉田委員
 ありがとうございます。
 首都高の工事を見て、設計を見直したことによりまして、コストの縮減を図り、予定価格が下がったということは、一定の評価ができると思います。
 しかしながら、前回の工事の仮契約が解除されてから、今回の契約案件として再提案されるまで、一年がかかっております。これは、大変に一年というのは長いような気もするんですけれども、この一年間、どのような作業をしていたのか、ここをちょっと詳しくご説明をいただきたいと思うんです。
 といいますのは、これは結果としてでございますけれども、今回の仮契約解除の原因となった防衛施設庁の談合事件で指名の停止となりました五十六社、この最後の一社が指名停止が解除されたのが、昨年十二月の二十一日であったわけでありまして、今回の手続は、結果として喪が明けたというか、すべての企業が指名停止期間から外れた、解除されてからということになりますので、そういうことと関係なく、この一年間というのは必要な期間であったんだということを、少し丁寧にご説明をいただければと思います。

〇山口道路建設部長
 再発注に当たりましては、今お答えしましたように、トンネルの構造見直しを行いまして、さらに設計、積算をやり直した。これに要した期間が五カ月ほどかかりました。
 具体的な構造の見直しにつきましては、首都高の構造を参考にいたしまして、トンネルの外径を、十二・五メートルだったものを十二・三メートルに縮小いたしました。それから、セグメントの耐火仕様につきまして、現場でトンネルの内側に耐火モルタルを吹きつける仕様から、工場で製作する段階でセグメント自体にポリプロピレン繊維を混入することで耐火性を持たせる構造に変更したためでございます。それにかかったのが、先ほど申し上げましたように、約五カ月ぐらいということです。
 その後、昨年の十二月より総合評価の技術審査委員会を開催、さらには工事を起工し、入札公告などを順次進めてまいりまして、四月には入札を行いました。今回の議会に改めて契約案件として提案しているわけでございます。
 技術提案型の総合評価方式で契約を行う場合、これらの契約手続に、一般的に約七カ月ほどを要しているわけでございまして、指名解除とは全く関係があるわけではございません。

〇吉田委員
 大変よくわかりました。
 私の地元の中野区で昨年度契約した妙正寺川の整備工事、激特事業ですね。激特の一という工事につきましても、今回と同じ技術提案型総合評価で行われたわけであります。この工事につきましても、契約の手続が七カ月程度かかったものと確認をいたしております。こういうことからしても、ご説明は大変納得のいくものであります。
 そして、先ほどご説明のあったポリプロピレンの繊維を混入したセグメントの導入という、これは本当に非常に最新の技術を導入したものであること、それから外径の縮小その他、本当に新たに設計をし直したんだということで、やはり大変に膨大な作業をされたということが大変によくわかりましたので、了承いたします。

 次に、大井地区のトンネルについて質問をいたします。
 この工事は、設計つきの技術提案型総合評価方式という契約方式によって技術提案を募ったということでございますが、仮契約を行った企業が提示をした技術提案の内容についてお聞かせください。

〇山口道路建設部長
 大井地区のトンネル工事は、品川区八潮において大井発進立て坑から地上までの区間に、二層構造のトンネルなどを建設するものでございます。
 この地区は、地盤が大変軟弱でございまして、地下には東京電力の十五万ボルトの高圧ケーブルが収納されたトンネルがあるなど、大変重要な構造物が複数埋設されておりまして、厳しい条件のもとで工事を行わなければなりません。
 この技術提案に当たりましては、これら埋設物への影響を軽減するのと、搬出残土の縮減、このような観点から、開削面積を、掘る面積をなるべく減らして、搬出土量をできるだけ減らすさまざまな工夫というか工法を求めたわけでございます。
 仮契約企業の提案は、地上から直接発進するシールド工法でございまして、トンネル区間の約八割を非開削工法で施工することにより、開削工法で施工した場合に比べまして、発生土量が約十三万立方メートル減少するということが見込まれております。

〇吉田委員
 わかりました。
 ただいまのご説明でありますと、大井トンネルについてもシールド工法が採用されたということであります。
 素人目にというか、素人が考えますと、両方ともシールド工法で結局は落札されたんだ、そういう工法が採用されたんだということになりますと、じゃ二件のトンネル工事を一括発注して、一件のシールド工事として発注すれば、二つシールドを組み立てなくてよくて、さらに経済的ではなかったのかなと素人的には思う向きが多いと思うんです。これ、二本の工事に分けなければいけないんだという理由を聞かせていただければと思います。

〇山口道路建設部長
 シールドトンネル工事の二の方は、途中に一切立て坑を設けず、約八キロメートルを一気に掘削するものでございまして、大断面シールドとしては国内最長の工事となります。工期的にも四年から五年かかるということで、品川線全体の工程を左右することから、昨年度契約を予定しておりました。施工方法につきましては、現場条件などから、もうシールド工法ということに限定されていたため、この工法で技術提案を募ったわけでございます。
 一方、大井トンネル工事は、先ほどもご説明したように、複雑で困難な現場条件でありますけれども、それだけではなくて、そこの場合は開削工法も可能であるということから、企業がおのおの技術力を柔軟に提案しやすいように、大井北換気所下部工事も含めまして、設計つき技術提案として幅広く技術提案を募ったところでございます。
 このように、二件の工事は工期も異なりますし、技術提案に当たって要求項目も違うことから、二つの工区に分けたわけでございます。結果的に、大井トンネルもシールド工法になったということでございます。

〇吉田委員
 ありがとうございます。そういう理由はよくわかりました。
 ただ、結局、大井トンネルを施工するシールドマシンで延長八キロメートルの方のシールドトンネルも続けて掘った場合には、工費はより安くなるのではないかという疑問もあるわけでありますが、それについては見解をお聞かせください。

〇山口道路建設部長
 大井トンネルの方は地下から上がってくるということで、湾岸道路との接続部でありますジャンクションに近いということでございます。したがいまして、道路に案内標識を設置するため、空間をトンネル内に確保しなければなりません。このため、今回提案されたトンネルの外径がシールドトンネル工事の二の方と比べまして、約一メートルほど大きくなっております。
 ご質問にありましたように、仮に大井トンネルのシールドマシンで八キロ全部を掘削した場合、全線にわたってトンネルの断面が広がってしまいまして、試算では、掘削残土が約二十万立方メートルふえるということで、不経済となることでございます。

〇吉田委員
 大変わかりましたというか、私も実はこの大井トンネルの仮契約をした企業に直接ヒアリングをさせていただきました。そうしましたところ、やはり、まず両者は、岩盤、八キロの方は非常にかたい岩をくりぬいていくので、やわらかい地上の部分をやるものとは同じものは使えない。地上のやつでやると、八キロメートルのトンネルの方まで持っていくとなると、工期もおくれてしまうし、さまざまな理由で、仮に一括で発注があっても、やはり二つのシールドを使わざるを得なかっただろう。そして、一つのやつでやれば、工期もおくれ、そして割高にもなるだろうということでありました。
 また、この延長八キロのシールドというのも、これまでは三キロぐらいの発注が多かった中で、非常に地上が住宅等があってなかなか立て坑をつくりにくい、付近に迷惑がかかるという制約もあって、非常に長い延長のものを今回発注された。最新の技術に対応した、細切れ発注じゃなくて大きな発注であって、これも実は従来にない発注の形態を採用されたんだ。
 そして、今回の大井の方も、設計つきの技術提案ということも、非常に柔軟な、事業者さんに、いろんなメーカーの新しい技術を採択できるというか、そういう発注の仕方であった。いろいろ勉強させていただいて、都の今回の発注は非常に合理的なものであったのではないかなと、素人ながら、私もそう思いました。
 ただ、今後とも、事業推進に当たって、大切な都民の税金を使ってやることですから、コスト縮減や民間のさらなる最新の技術の導入などによって、さらに経済的で品質にすぐれた工事ができるように、そういう発注の仕方に努めるべきだと一般的には思うわけで、ぜひこの辺の所見を伺います。

〇山口道路建設部長
 民間のすぐれた技術力を有効に活用いたしまして、より経済的で、より高品質な構造物を築造するために、今回実施しました総合評価方式は大変有効だと考えております。
 今後とも、コスト縮減に努めながら、中央環状品川線の平成二十五年度開通に向けて、着実に事業を進めてまいりたいと考えております。